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上原浩治の話題にならない偉業たち。
投手の「名球会入り」の難易度は? 

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ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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posted2017/07/25 11:25

上原浩治の話題にならない偉業たち。投手の「名球会入り」の難易度は?<Number Web> photograph by AFLO

今季の上原はカブスで32回を投げて35奪三振(7月23日現在)。42歳にして三振を奪う技術も健在である。

130勝と120セーブを同時に記録した投手は少ない。

 上原の日米通算128セーブは、日本歴代20位の林昌勇(元ヤクルト)に並ぶ記録だ。ただし、林は韓国プロ野球で通算253セーブを挙げており(6試合だけ登板したメジャーではセーブなし)、日韓通算では381セーブにもなる。同様に韓国や台湾のプロ野球でも幾つかの数字を残している高津臣吾は、日・米・韓・台の記録を加えると通算755試合に達し、それは歴代9位の鹿取義隆に並ぶ。

 そのあたりが合算記録の難しいところだが、議論すべきところは他にある。

 名球会は打者なら通算2000安打、投手なら通算200勝か250セーブが入会資格になっている。前述の通り、上原はここまで日米通算134勝、128セーブで入会資格を満たしていないが、130勝以上を挙げながら、同時に120セーブ以上を記録している投手は多くない。

 上原に匹敵するのは大野豊氏(元広島・148勝138セーブ)や斉藤明夫氏(元大洋・128勝133セーブ)、斎藤隆氏(元横浜・ドジャースほか・日米通算112勝139セーブ)ぐらいではないかと思う。

 ついでに書いておくと、小林雅英(日米通算42勝235セーブ)や藤川球児(日米通算49勝225セーブ)も名球会には入っていない。彼らは通算セーブ数の歴代4位と5位である。彼らが名球会に入っていないのは、とても残念なことだ。

上原浩治が名球会に入れないのは損失だ。

 1978年に創設された名球会は当初、投手なら日本プロ野球で通算200勝、打者なら同2000安打に限定されていた。250セーブと日米合算記録が入会資格として認められるようになったのは2003年のことだ。

 勝利数よりセーブ数の方が多いのは、「先発投手が勝ち星を挙げる条件を満たすのは救援投手より難しい」という考え方からきているのだろうが、そこはもう少し柔軟に対応して頂いていいような気がする。単純に勝利数とセーブ数を合算することが正解だとは言わないが、大野豊、斉藤明夫、斎藤隆、上原浩治、小林雅英、そして藤川球児には、その資格があると思う。

 通算記録というのはメディアやファンが話題にしない限り、話題にはならない。だが、話題になる時には往年の名選手の名前が掘り起こされて、メジャーリーグがそうであるように、日本の近代史と時を刻んできた。

 同時に先発から救援に転向した投手たちの中にも、彼らがチーム事情や自らのキャリアを再生させるために通ってきた決して平たんではない道のりが刻まれている。

 名球会への入会が日本の野球殿堂とは違い、報道関係者の投票で決められるものではないというのは承知しているが、その入会資格についてはもう一度、再検討するべき時期に来ているのではないかと思う。

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