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「俺は老人ホームに来たんじゃない」
31歳ルーニー、古巣復帰は美談か。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byGetty Images

posted2017/07/17 09:00

「俺は老人ホームに来たんじゃない」31歳ルーニー、古巣復帰は美談か。<Number Web> photograph by Getty Images

顔に刻まれた皺は年月を経たことを感じさせる。ルーニーは10代の頃と違う味わいを、古巣エバートンで醸し出せるか。

地元ファンからはここ近年「いつ帰って来るんだ?」

 だが、「心のクラブ」との絆は切れなかった。

 ユース時代の頃からの恩師、D・ファーガソンの功労試合が行われた2015年8月のことだ。移籍後初めてエバートンの青いユニフォームに袖を通したルーニーは、ファンに温かく迎えられた。またこの1、2年は、実家を訪ねる度にエバートン・ファンから「戻って来るんだろう?」、「いつ帰って来るんだ?」と、クラブへの復帰を促されていたことを本人が明かしている。

 そのエバートンに、今夏6人目の獲得選手として復帰を果たした。エバートンは昨年筆頭株主となったイラン系ビジネスマンの財力を手に入れ、サウサンプトンからロナルド・クーマン監督を引き抜いている。現体制2年目で上位進出を狙うチームには将来性高い20代前半の新顔が次々と加わった。それでも、地元ファンが最高に沸いた補強が31歳の「古顔」であったことは間違いない。

FW、トップ下、ボランチ……定位置確保は難しい?

 もっとも、新戦力としてインパクトを残せなければ、復帰の「美談」が台無しになる可能性がある。現時点でもルーニーは13年前に引き抜かれた頃とは別人とする声がないわけではない。

 正直、中立的な目で眺めてもレギュラーに返り咲く姿はなかなか見えてこない。エバートン首脳陣も、ルカクに代わる主得点源としての期待を寄せるほど盲目的であるはずがなく、オリビエ・ジルー、クリスティアン・ベンテケ、ウィルフリード・ボニーといったストライカー陣の名前が獲得候補に挙がり続けている。

 ルーニーが希望しているトップ下も競争は厳しい。売却の噂があるロス・バークリーが去ったとしても、エバートンはクラーセンという成長期の後釜を入手済みだ。またFWながらアウトサイドでもプレーできるラミレス、膝の怪我からリハビリ中だがヤニク・ボラシーもいる。ユナイテッドでルーニーがコンバートされた中盤センターも、イドリサ・ゲイとモルガン・シュネイデルランのコンビが適任だろう。

 移籍決定翌日、記者会見に臨んだクーマンはルーニーの起用法を「最も重要なのはポジションではなくクオリティだ」と説明している。チームには若手が多く、潜在能力は高いが勝者としての経験値が不足している。

 だからこそシュート力と正確さ、キープ力、長短のパス能力と視野の広さ、そして何より主要タイトル11冠の優勝経験に裏付けされた勝負強さというルーニーの持ち味を便利に活用していく。

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