プロ野球亭日乗BACK NUMBER
高橋・巨人、後半戦の鍵握る2番打者。
山本泰寛と重信慎之介が競うが……。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2017/07/14 11:30
同期の山本と「2番打者」の席を競い合うこととなった重信。求められるのは「打撃」である。
「後半戦の鍵を握る2番候補がいるとしたら……」
山本は、追い込まれたり、一塁に走者がいるときにはポイントを近づけて右への打球を打てる。最低限でも粘って球数を投げさせようという意識を感じさせる打撃ができる、巨人では数少ない打者ということだ。
そういう意味では後半戦のシビアな局面で、最も2番としての期待がかかるのがこの山本であることは間違いない。
「ただもう1人、後半戦の鍵を握る2番候補がいるとしたら、それは重信です」
一方、これはある球団関係者の証言だ。
「もし重信が2番に定着できれば巨人の野球に革命が起きるかもしれない。それぐらいの能力があると高橋監督も首脳陣も評価している選手なんです」
この話を聞いたとき、重信慎之介外野手の名前に実は少し意外な気持ちがした。前半戦では代走要員としての起用が多く、「2番打者」としては、まだ同期の山本にも置いていかれている感がある。
確かに重信には並外れたスピードがある。そこに首脳陣はかなり大きな期待を抱いているということなのだろう。
7月4日の広島戦では5月26日以来の「2番」で先発起用された。
この試合では0対0の6回1死から右前安打で出塁すると、広島バッテリーの警戒の網をくぐって二盗に成功。そこから坂本の先制タイムリーを引き出している。
重信に必要とされる要素は「打撃」。
重信が「2番」にはまれば、例えば初回に先頭打者が出塁した場合に、併殺のリスクが少ないばかりか、ゴロさえ転がせば内野安打の可能性もあるし、最悪は走者が入れ替わっても盗塁でバントと同じ1死二塁という状況を作れる可能性も少なくない。
もちろん1点ずつというゲームプランはあるかもしれないが、重信が機能すれば簡単にアウトを与えず1死二塁、うまくすれば無死一、二塁や一、三塁を作ることもできるということだ。そういう意味ではこのスピードスターは「革命」を起こす潜在能力を秘めているというのにもうなずける。
ただ、問題は肝心の打撃なのである。
久々の広島戦を含めその後3試合に先発したが、合わせて12打数で2安打2四球3三振と結果を残せなかった。大学時代にはそれなりにパンチ力もあったが、プロの世界ではどういうスタイルを作り上げていくのか。
そこが見えてきていないようでもある。