球道雑記BACK NUMBER
引退決断の井口が最も目をかける男。
“言われやすいタイプ”の清田育宏。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byKyodo News
posted2017/07/10 11:30
伊東監督からの期待も厚い清田。その潜在能力は抜群だけに、井口の言葉を胸に復調を果たせるか。
「その場でも決して偉ぶらないというか……」
アドバイスを受ける側の清田は言う。
「自主トレも毎年一緒にやらせてもらっていますけど、その場でも決して偉ぶらないというか、どんなことでも井口さんが率先してやってくれていた。僕もそこで気付かされることが数多くありましたし、僕が同じくらいの立場になったら、そういう人間になりたいです」
まさに先輩の背中を見て育つ。清田と井口の関係はそうしたものだった。
ここ2年間、清田は度重なる怪我に泣かされた。
昨年は右足脹脛の肉離れを起こして、痛み止めを飲みながら試合に出場。今年もオープン戦でスライディングキャッチを試みた際、左肩を脱臼。開幕にはなんとか間に合ったが調整不足は否めず、4月の月間成績は43打数4安打、打率.093と苦しんだ。
それでも彼は怪我を言い訳にはしなかった。
「左肩の影響というよりは……ただ打てなかっただけですね」
怪我をしていても試合に出られる怪我なら試合に出る。自分から「出られない」とは言わない。
肉体、精神が厳しくても、耐えて戦うこと。
そこには試合に出れば、必ずグラウンドに何か良いことが待っているという井口の教えがあった。だから肉体的にも精神的にも厳しい状況にもそれに耐え、日々戦った。
「井口さんは『怪我をしていても出る』ということを当たり前のように言っていますし、一緒に自主トレをやらせてもらっている阪神の鳥谷さんも怪我をしていても痛いそぶりを見せない選手なので、僕もそういうところを真似しなきゃいけないなとは思っています」
今季2度目の再調整を言い渡された6月下旬、清田はロッテ浦和球場にいた。赤銅色に日焼けしたその額からは大量の汗が噴き出していた。