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元嫌われ者がマスターズを勝つまで。
ガルシアが捨てた驕り、学んだ感謝。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byAFLO
posted2017/07/04 08:00
セルヒオ・ガルシアは、「暴れん坊」を意味するエルニーニョというニックネームが、すっかり似合わない男になった。
戦う意欲を失いかけていた彼を救ったものは……。
そんなガルシアが久しぶりに勝利を収めたというニュースが欧州から伝わってきたのは2011年のこと。2週連続優勝を果たしたガルシアは涙を流しながらこう言った。
「僕は驕っていた」
四面楚歌になり、勝てなくなり、戦う意欲も失いかけていた一時期。光の当たらない暗い道を歩いていたガルシアを立ち直らせてくれたのは「家族や友人、母国の地元の人々の温かい応援」だったそうだ。
感謝の気持ちが芽生え、以前とは別人のように謙虚になった彼は、同時に戦意も取り戻し、成績も向上。2012年には米ツアーでも復活優勝を果たし、優しさや明るい笑顔も取り戻し、社会貢献やメディア対応にも積極的なナイスガイへと変わっていった。
「今の僕は昔より少し穏やかになった」
今年のマスターズを迎えたときは、その1年半ほど前から交際していた彼女(現在は妻)の影響で、考え方もずいぶん変わっていた。
「今の僕は昔より少し穏やかになった。いいことも悪いことも、ありのままに受け入れる。そして悪い出来事や悪い流れを良き方向へ変えていけるよう頑張る」
その姿勢がガルシアの最終日のゴルフを支え、勝利に導いたことは疑いようもない。アーメンコーナーの13番では左のブッシュに打ち込んだが、そこから最善を尽くしてパーを拾った。気持ちを切らさず、冷静にパーセーブできた彼だったからこそ、14番のバーディーへ、15番のイーグルへとつなげることができ、プレーオフを制し、メジャー制覇という悲願を達成することができた。
とても印象的だったのは、ガルシアの勝利をオーガスタで眺めていたハリントンの言葉だ。2007年全英オープンで目前まで迫っていた勝利をガルシアから奪い取る格好でチャンピオンになったハリントンは、あのとき敗者となった傷心のガルシアに礼を尽くして声をかけたが、以後、ガルシアはハリントンに悪態をついていた。