ル・マン24時間PRESSBACK NUMBER
ル・マンで豊田章男社長が語った、
ピット裏に掲げた「日の丸」の意味。
text by
樹本野真波Nomaha Kimoto
photograph byNomaha Kimoto
posted2017/07/11 11:00
レーシングスーツで現れた豊田章男社長(左)と“ドクター”の愛称を持つヴォルフガング・ポルシェ氏。
「単なるエコではないワクワク感やドキドキ感」
また、豊田氏はTOYOTAとル・マンの今後についてこう語った。
「ここは24時間、毎周毎周アタックしなければいけない場所です。ペース配分はない。また、ハイブリッドで走り切るということで単なるエコではないワクワク感やドキドキ感をここヨーロッパで多くの方に感じていただけるのではないかと期待しています。
企業としてレースをやることは大変なんですよ。レース好きの私が公私混同でやっていると思われているかもしれないが、そうではない。
ここには車の工場もなければサプライチェーンもない。持ってきたパーツとここにいる人材で戦うしかない。そこにはあれがないからできないとか36時間あればできるという言い訳は一切通用しない。車を開発するには3、4年という期間がかかりますが、ここル・マンでは、その時間では得られないような緊迫した環境のなかでのクルマ作りができるんじゃないかなと思うんです。人間、追い詰められたらとんでもない力が出るんですよ。そういう環境を作るのが私の役割だと思うんです」
レース期間中、取材で訪れたTOYOTAのピット裏でふと上を見ると日本の国旗が掲げられていた。一般的にカーレースのチームは様々な国籍のクルーで構成されることが多く、TOYOTAのクルーも日本人だけではない。ましてやグローバル企業が自国の国旗だけを掲げることはあえてしないということが多い。
そのことを豊田氏に聞いた。
「トヨタはどうしても日本代表だと思われるんですよ。桜の樹のような存在としてトヨタに期待いただくことが多いと思います。桜の樹は世界各地にありますが、世界中の人たちが日本を意識する象徴だと思います。つまり我々トヨタが日本代表という気概を持って参加していることの現われなんです。開会式では会場に参加ドライバーの出身国の国歌が流れていました。メインスタンドには多くの国旗が並び、表彰台には勝者の国旗が掲げられています。トヨタは日本を背負って戦っていると思っているでしょう。“日の丸”は桜なんです」
2018年、次にくる「24時間」でTOYOTAは表彰台の一番高いところに日の丸を掲げることができるのだろうか。
“負け嫌い”のボスが率いるTOYOTAの戦いはもう始まっている。