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「デュラントってチキンなのか?」
3連勝は、1年前の疑問への完全回答。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAFLO
posted2017/06/09 17:00
ケビン・デュラントがスターであることは論を待たない。あとは「スーパースター」になれるかどうかなのだ。
今のところ、KDは完全にファイナルを支配している。
しかしKDの真価は、あくまでスーパースターであるレブロン・ジェームズ、カイリー・アービングと対決するファイナルで決まると考えていた。
そして、KDは化けた。
第1戦、38点。
第2戦、33点。
ゲームを支配するプレーぶりで、KDは圧倒的な存在感を示した。
クリーブランド・キャバリアーズはKDだけを抑えていればいいわけではない。ステフィン・カリーも、トンプソンだっている。
ウォリアーズが、スーパーなチームである所以だ。
しかし、第3戦はさすがにキャバリアーズも意地を見せた。対策を講じつつ、攻撃ではレブロンが39点、アービングが38点という破壊的な力を見せた。
それでも最後に試合をさらったのはKDだった。第4Qの残り45秒、ウォリアーズが111-113とリードされた場面が分岐点となった。KDが3ポイントを決めて逆転したのだ。
議論を呼んだレブロンの「パス」という決断。
実は、KDがシュートを決めるひとつ前のプレーがアメリカでも議論になっている。キャバリアーズのオフェンスで、レブロンがインサイドに切り込み、左側の3ポイントライン付近でフリーになっていたカイル・コーバーへとパスを出した。
コーバーは名シューターだが、このファイナルに限っていえば好調とは言えない。コーバーのシュートは外れ、KDがリバウンドを取る。そして自らドリブルで運び、3ポイントラインの手前、レブロンの目の前でストップ&シュート。
シュートは美しくネットに吸い込まれ、ウォリアーズは逆転に成功した(この直後、カリーがマウスピースをフロアに落とし、慌てているのが微笑ましかった)。
この後、アービングが1on1のシュートを外し、ウォリアーズの3点リードとなり、最後はレブロンが3ポイントを打とうとしたが、小説の名脇役のようにイグダーラが登場し、レブロンの手からボールをはたいて試合をクロージングした(昨季のKDに対するディフェンスを彷彿とさせた。冷静なイグダーラならではのスーパーなプレーだった)。