スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
「デュラントってチキンなのか?」
3連勝は、1年前の疑問への完全回答。
posted2017/06/09 17:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
AFLO
ケビン・デュラントって、チキンなのか――。
そう思ったのは、彼がオクラホマシティ・サンダーでプレーしていた昨季のカンファレンス・ファイナル第6戦のことだった。
サンダーはディフェンディング・チャンピオンのゴールデンステート・ウォリアーズに対して3勝2敗とリードし、ホームに戻った。大チャンスである。
しかしウォリアーズはしぶとく、残り2分30秒の段階で99-99の同点。KDことデュラントはここで勝負に出ようとするが、アンドレ・イグダーラにボールをはたかれてしまう。
その後、101-101となって、ウォリアーズのクレイ・トンプソンが残り1分35秒に3ポイントを決めて逆転に成功する。
リードしていたサンダーは逆に追い込まれ、この後のKDの3ポイントシュートがひどかった。軸がぶれ、リングのフロント部分に当たる質の低いシュート。
サンダーは敗れ、続く第7戦も敵地で健闘したが、敗退を喫する。
KDは紛うことなき名選手であり、スターだ。しかし、NBAの過去のスーパースターは、必要な時に、記憶に残るシュートを決めてきた。KDのシュートは、「スーパー」には程遠かった。
ウォリアーズへ移籍したKDに批判が殺到。
オフシーズンの驚きは、KDが敗れたウォリアーズへと移籍したことだ。
「チャンピオンリングが欲しいからって、いくらなんでもねえ……」
「KDが戦力格差を作った張本人だ」
KDの決断に関しては、いまも批判は根強い。
私は取材の体験から、ウォリアーズのジェネラル・マネージャー、コーチ陣、そしてスタッフに至るまでの現体制に心酔していることもあり、KDの加入がどのようなケミストリーを生み出すか楽しみにしていた。
たしかに、ウォリアーズはNBAの力の均衡を崩してしまったかもしれない。しかし、KDの加入によって、スポーツの枠にとどまらない「エンターテインメント」の世界で超一流になったと思っている。