ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
プロレスとファン投票の複雑な関係。
猪木&馬場から、1.4のメインまで。
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph byAFLO
posted2017/05/30 07:30
アントニオ猪木とジャイアント馬場。日本プロレスの2大巨頭が1つのリングに立つ驚きは、当時いかほどだっただろうか。
試合は小川が勝ったが、ファンは川田一色。
ルールは、実際の試合での勝利が1ポイント、オフィシャルWEBサイトでの「どちらが素晴らしかったか(ハッスルしていたか)」の投票結果が1ポイント、最後に国技館の来場者が事前に配られた小川、川田のボードを掲げ、ハッスル野鳥の会が素早く集計するという紅白歌合戦システムでの1ポイント。この“変則3本勝負”で、勝敗を決めるというものだった。
これによって、試合自体は小川が勝利したものの、WEBサイトと来場者ボードの数で川田が上回り、結局ポイント2-1で川田の勝利!
川田ボードで埋め尽くされた客席を、リング上から呆然と眺める小川の姿が忘れられない。この結果を受けて、小川は「もう東京では試合をしたくない。純粋に見てくれる地方でやりたい」と発言。すっかりスネてしまったのだった。
中邑・棚橋に1.4のメインを奪われたオカダ・内藤。
そして、ここ数年で最も物議を醸したファン投票といえば、2014年の新日本1.4東京ドーム大会での、メインイベント試合順ファン投票だろう。
この大会は当初、王者オカダ・カズチカに、前年のG1優勝者・内藤哲也が挑戦するIWGPヘビー級タイトル戦がメインに予定されていた。
しかし、ダブルメインとしてIWGPインターコンチネンタル選手権・中邑真輔vs.棚橋弘至という、当時の「新日本V字回復」を象徴する選手同士の試合が組まれたため、「どちらがドームの最後を締めくくるにふさわしいか」をファン投票で決めることになり、結局、メインは中邑vs.棚橋に決定。
G1王者が挑戦するIWGPタイトルマッチが、事実上のセミファイナルに降格となってしまった。
当時の内藤はG1を制したとはいえ、まだ自らの方向性が定まり切らず、ベビーフェイスとして棚橋の後塵を拝していたブレイク前。2015年のNumberで行われた「新日本プロレス総選挙」でも結果は12位であり、新日本内でもトップ10に入れないほど、ファンの支持を得られていなかった。2014年1.4ドームでのファン投票の結果は、「お前にドームのメインは任せられない」という、ファンから“不信任”を突きつけられた結果だったのだ。