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窮地に燃える錦織圭が戻ってきた!
急きょ参戦ジュネーブでの手応え。
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byAFLO
posted2017/05/26 11:45
トップ10をめぐる争いが激しさを増す中、錦織のジュネーブ参戦は全仏オープンに向けての良い“たたき台”となっているようだ。
最終セットでトリプルマッチポイントの大ピンチ。
序盤の錦織は相手のサーブに悩まされた。うまく予測しても、ボールはラケットをかわして跳ねていく。時速230キロに迫る高速サーブだけでなく、長身選手独特の直線的なサーブを際どいコースに突き刺してくる。それもあって第1セットはアンダーソンの一方的な展開となった。「彼がサーブもグラウンドストロークも攻撃的で、球も深く、自分はディフェンスしかできない状況だった」と錦織は手も足も出なかった。
しかし、第2セットは「自分から打っていくよう意識した」という錦織がリズムをつかみ、セットカウント1-1。決着は最終セットにもつれた。
最終セットもサービスキープが続く中で、相手から受ける圧力が徐々に増してきた印象だった。アンダーソンが勢いを取り戻したことで、錦織はサーブとリターンだけでなく、ストローク戦でも押され気味だった。錦織の4-5で迎えたサービスゲームは0-40となり、相手のトリプルマッチポイントと追い込まれた。
しかし、錦織はこの窮地を脱出したのだ。
瞬時に精神的な切り替えができる、勝負師。
本人のコメントでこの場面を振り返る。
「ミスが相次いで0-40まで行った。緊張する場面で振っていなかったり、入れにいってボールが伸びてアウトしたり。半分負けたと思っていたので、そこからはなるべく振り切って、3本いいプレーができた」
この精神的な切り替えは勝負師ならでは。また、緊張によってショットに思い切りがなくなっていたのを即座に修正できるのは、さすがだ。
タイブレークでも2-4から挽回を見せると、6-6で迎えた相手サーブでは、アンダーソンが安全策で打った時速181キロのファーストサーブをフォアでたたき返した。そしてマッチポイントはイージーボールをフォアでクロスに決める。大接戦を制した錦織は、両手を掲げるガッツポーズでみずから祝った。