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松山英樹は誰からもショットを学ぶ。
12歳年上の苦労人に尋ねたこと。 

text by

桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byYoichi Katsuragawa

posted2017/05/21 09:00

松山英樹は誰からもショットを学ぶ。12歳年上の苦労人に尋ねたこと。<Number Web> photograph by Yoichi Katsuragawa

子供のファンとともに写真に収まるマクガート(中央)と松山。米国人ゴルファーにも松山の探究心は認められるところだ。

松山は37歳の中堅米国人プレーヤーに声をかけた。

 日本のコースではあまり見られない芝種。バミューダであっても、松山は「ラフや順目(芝芽が飛球線に向いている)のフェアウェイからならさほど問題ない」というが、この逆目のフェアウェイからの寄せ方にずっと苦労してきた。

 チームスタッフの面々が見守る中、約30分間それを繰り返し、いまひとつ手ごたえを得られぬままパッティング練習に移ろうとした時だった。松山はすれ違いざまに、練習場に入ってきた選手に声をかけた。

 ウィリアム・マクガートという中堅プレーヤーである。

 松山よりも一回り上の37歳は、米国東部カロライナ地方で生まれ育ち、20代半ばの2004年にプロ転向した。

「ヒデキとはまったく違う20代だった」という本人の言葉通り、ミニツアーを転戦する下積み時代を過ごした。'09年末に30歳で下部ツアーの予選会を突破。その後レギュラーツアーと下部ツアーを行き来して、苦労の末に昨年6月のメモリアルトーナメントで初優勝。松山が米国初勝利を飾った大会の2年後のチャンピオンになった。

 世界ランキングは現在46位。確かに、25歳で世界のトップ集団にいる松山の道のりに比べれば、ずいぶん遠回りに違いない。

「うまいのは知ってたんです。だから……」

 今年4月のマスターズでのこと。初日に3アンダー2位と好プレーを見せながら、クラブハウスの前で警備員に呼び止められる彼の姿があった。「ここはプレーヤーでなければ入れません」。あわてて選手バッジを見せて事なきを得たマクガートは、自分を知らない相手に苛立つこともなく「よくあること」とばかりに、笑顔でその場を通り過ぎて行った。

 松山は昨季、試合で一緒に回ったマクガートの技術を覚えていたという。「うまいのは知ってたんです。だから、『どうやって打ってるの?』って」

 今回のプレーヤーズ選手権の会場であるフロリダも、マクガートの地元カロライナも、バミューダ芝のコースがポピュラー。「僕が子供のころから慣れ親しんだ芝だ」というマクガートのチップショットはやはり、同じ状況で放つ松山のボールよりもスピンが効いて、グリーン上でよく止まった。

【次ページ】 “午前8時半から”の強引な誘いを断れなくなったが。

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