ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
松山英樹は誰からもショットを学ぶ。
12歳年上の苦労人に尋ねたこと。
posted2017/05/21 09:00
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Yoichi Katsuragawa
「人が練習してるってのに……」
遠く、背中越しで響く黄色い声に、松山英樹は苦笑いした。
男子ゴルフのザ・プレーヤーズ選手権は4大メジャーに次ぐ“第5のメジャー”に位置付けられていて、主催するPGAツアー肝いりの大会である。
高額賞金や長期シードといったものだけでなく、ファン向けのイベントも大いに充実している。開幕2日前の火曜日には浮島グリーンで知られる17番ホールで、恒例の大々的なセレモニーが行われた。コンサートには今年、歌手のサム・ハントらが出演。およそゴルフに興味がないであろう、サマードレス姿の多くの女性から熱狂的な声援が浴びせられていた。
それは午後6時、ちょうど練習場で松山の打ち込みが熱を帯びてきた時のことだった。
その日は午前中から18ホールを回ってコースをチェックしていた。日没は午後8時過ぎとはいえ、相変わらずの長時間練習だった。
不得手にしているバミューダという種類の芝。
夕刻のドライビングレンジを出ると、ボールが詰まった緑色の布袋を持ってチッピングエリアに移動。今度はアプローチショットの鍛練だ。
砲台型のグリーンに落ちるショットの行方を、松山はつぶさに目で追った。時間とともに表情が険しくなっていく。納得したようで、していない。
不得手にしているシチュエーションだった。
バミューダという種類の芝が薄く刈り込まれ、かつ逆目(芽が飛球線と反対に向いている)のライ。年中温暖な地域のゴルフコースによくあるこの芝種は、熱と衝撃に強い特性がある。そのため、アイアンやウェッジでのショット時にクラブヘッドが芝に“引っかかる”現象が出て、うまくヒットできないミスが誘発される。