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今季NBAで最高の選手は誰なのか?
MVP投票権を得た日本人記者が解説する。
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byGetty Images
posted2017/05/08 07:00
チームはウェスタン・カンファレンス・ファーストラウンドで敗退したが、今季のウェストブルックの個人成績は、NBA史に残る偉大なものだった。
ウェストブルックは歴史的シーズンを送ったが……。
歴史に残るシーズンを送ったという意味では、何といってもラッセル・ウェストブルック(オクラホマシティ・サンダー)だ。
リーグ史上最多となる43試合でトリプルダブルを記録しただけでなく、リーグ史上2人目となるシーズン平均でのトリプルダブル(31.6点・10.4アシスト・10.7リバウンド)を達成。得点王のほか、アシスト(3位)、リバウンド(10位)、全体的なプレー効率を表すエフィシェンシー(33.8、1位)と、すべてでトップ10入りし、個人スタッツでは抜きんでている。難点はチームが47勝35敗で、ウェスタン・カンファレンス6位という凡庸な成績だったこと。勝率6割未満のチームからMVP選手が選ばれた例は過去に3回あっただけなのだ。
チーム成績と個人スタッツのバランスという点ではジェームズ・ハーデン(ヒューストン・ロケッツ)。
アシスト(11.2)がリーグ首位で、得点(29.1点)も2位。以前は、うまくいかない時のボディランゲージが悪いなどと批判されることも多かったが、今季、ポイントガードにコンバートされて発揮したリーダーシップは評価に値する。チーム成績も55勝27敗で、競走が激しいウェスタン・カンファレンスで3位だった。ただ、ロケッツの躍進は、新ヘッドコーチのマイク・ダントーニの戦術や、戦力を揃えたダレル・モーレーGMの功績も大きく、どこまでハーデンの功績とするかは意見が分かれるところだ。
現時点で最高の選手はレブロン・ジェームズだが……。
今の時点でリーグ最高の選手という意味でのMVPなら、間違いなくレブロン・ジェームズ(クリーブランド・キャバリアーズ)だ。
今シーズンの賞だとはいえ、毎年チームをNBAファイナルまで導き、昨季のキャブズを優勝させた存在感の大きさは強烈だ。個人スタッツでも得点(26.4点)、アシスト(8.7)、エフィシェンシー(31.0)でトップ10位以内に入っている。試合に出ているときと出ていない時の得失点差が4人の中で一番大きい(48分あたりで+17.3点)。気持ちが入ったときのディフェンス力もリーグでトップクラスだ。
ただ、チームとしても個人としても、レギュラーシーズンはプレイオフに向けての準備ととらえ、手を抜けるところは抜いて流しているのが難点だ。2011年から6年連続でNBAファイナルに進出しており、毎年6月まで戦っているのだからしかたないことだが、レギュラーシーズンのMVPを選考するときにはマイナス材料だ。
こうやって比較するとわかるように、それぞれ一長一短。スタッツを比較し、チーム成績を比べ、プレーのインパクトや、数字には出てこないような実力など、考えれば考えるほど悩み、暫定順位をつけても、翌日になると入れ替えたくなり、本当に決めるのが難しかった。