球体とリズムBACK NUMBER
CL4強に残ったモナコって一体何者。
富豪だらけの国で育成クラブが成功?
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byAFLO
posted2017/04/30 11:30
ムバッペとファルカオの年齢差デコボココンビがモナコの看板だ。ムバッペのドリブル、ボールタッチは一見の価値がある。動画サイトでぜひどうぞ。
ベンゲルがアンリを見出したのも、モナコだった。
下地はあった。アーセン・ベンゲル監督(現アーセナル)は名古屋に来るまでの7年間、モナコで指揮を執り、リリアン・テュラムやエマニュエル・プチ、ティエリー・アンリといった後のW杯優勝者たちを下部組織から引き上げ、一人前にしている。
あらためてその育成スタイルに回帰する際、クラブはスポルティングでウィリアム・カルバーリョら複数のユース選手を抜擢し、1年で名門を復活させたジャルディム監督を迎え入れた。
また昨夏には、パリでアドリアン・ラビオらを育て上げたコーチ、ベルトラン・ルゾーを引き抜いてアカデミー・ディレクターに据え、ムバッペの覚醒を促している。
一昨季にはハメス・ロドリゲスとファルカオ(今オフに復帰)、昨季にはヤニク・カラスコやアントニ・マルシャル、ジョフリー・コンドグビアといった主力をごっそり手放しながらも戦力を維持し、今オフは的確な補強で力をつけて、センセーショナルなシーズンを送っている。
紆余曲折はあったけれど、今は正しい道を進んでいると実感していることだろう。
富裕層だらけのモナコで、育成が機能する奇跡。
豪奢なヨットハーバーやカジノで知られる富裕層の遊び場、モナコ。そんな最も起こりそうもないところで、サステイナブルなクラブ運営のひとつの理想形が示されているのだ。今季のチャンピオンズリーグで4強に終わったとしても、現在首位のリーグアンで優勝を逃したとしても、さらにはオフに複数の主力を放出することになったとしても──。
それらは十分に起こり得ることだが、おそらく彼らはこれからも原石を磨き、世界中のフットボールファンに新鮮な驚きを提供してくれるような気がする。