炎の一筆入魂BACK NUMBER
37歳・石原慶幸vs.29歳・會澤翼!
広島を牽引する2人の熱血捕手。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2017/04/20 11:00
4月18日のDeNA戦でサヨナラ打を放った會澤がファンとハイタッチ。勝負強いバッティングも會澤の魅力のひとつである。
「お前は2番手を目指すな」
正捕手を争う2人には、特別な絆がある。
まだ會澤が一軍で出場したばかりの2009年のシーズンオフ。会食のひとつである「バッテリー会」が行われた数日後、石原は會澤を食事に誘った。1対1の“サシ飯”だった。
当時まだ駆け出しの若手捕手は、当時すでにチームの正捕手だった先輩を前に最初は緊張で固まっていたという。
当時の會澤はまだ一軍デビューしたばかりで、石原とはグラウンドでもほとんど言葉を交わしたことがなかった。食事に誘われても、他にも誘った選手がいるのだと思っていた。それが……目の前に石原ただ1人。心中では、怒られるのかなと思っていた。
だが、違った。
想像もしない言葉に會澤の胸は熱くなった。
「お前は2番手を目指すな。2番手を目指したら、そこまでの選手になる。お前は1番手を目指せ」
驚きとともに喜びでもあった。憧れだった先輩の言葉は激励だった。
挑んでこい、という気持ちがうれしかった。
「それがチームのためになる」
あの日から7年後、2人は2枚看板となり25年ぶりの優勝という形で結実した。
ライバル関係だけではない。争いながら、共闘する関係性がある。
「アツ(會澤)だけでなく、聞かれればどんどん答えたい。お互い切磋琢磨してやっていきたい。それがチームのためになる」
長く広島の正捕手を務める石原はサラリと言う。
広島に芽生える新たな伝統となるか――。