思い出した感覚は「Let's Enjoy!」。

　左の中継ぎ候補は、今回のスプリングトレーニングに参加するダイヤモンドバックスの陣容に、メジャー枠と招待選手を含めても数人しかいない。

「むちゃくちゃチャンスですよ。そのうちの4人はAAAで一緒にやって来た選手ですから、相手の力もよく知っている。負ける気はないというか、負けたくはないですよね」

　さらに中後はこう続ける。

「その一方でピンチでもあると思うんです。それだけしか人数がいない競争で『コイツはいらないな』となったら、すぐに補強にまわって使ってもらえないですし、仮に今回枠に入れても、結果が残されへんかったらすぐに落とされる。どっちに行っても崖っぷちなんです」

　だからと言って結果を出そうと力むつもりもないし、後ろ向きになるつもりもない。目の前の打者を相手にただ淡々と投げるだけ。それ以上でも以下でもない。

　ひとつ書き残したことがある。

　彼が昨年、渡米してからの半年間で思い出した、かつて自分が野球少年だったころの感覚。

「Let's Enjoy!」

　その言葉を胸に、海の向こうでも彼はきっと新しい仲間と共に笑って毎日を過ごしていくに違いない。