球道雑記BACK NUMBER
中後悠平、開き直ってメジャー昇格だ!
米国で蘇った「Let's Enjoy!」の心。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byAFLO
posted2017/02/16 11:00
ダイヤモンドバックスのキャンプで笑顔を見せる中後。昨季のキャンプよりも「手応え十分」だそうだ。
「ロッテにいたころの自分はまだプライドも高かった」
まず、彼はけっして自分を大きく見せようとはしない。
インタビュー場所にも街のファミリーレストランを自ら指定して、なるべく自然体でいられるような配慮をしてくれる。
ティータイムを楽しむ街のご婦人たちに囲まれた中の取材でも、まるで気にとめない。質問に対して壁を作るようなことも一切せず「聞きたいことがあったら、なんでも」というその余裕からは、どんなタイプの打者が相手でも、どんな窮地の場面でも動じない心の強さを、この半年間で身に着けたようにも感じさせた。
「ロッテにいたころの自分はまだプライドも高かったし、意地も張っていたように思います。それも今、思い返せばですけどね。でも、今は周りの評価よりもずっと自己評価は低いです。
だからメディアの方にも『もうすぐメジャー』って話をされますけど、『そんなに甘くないぞ』って話をします。
これまでの僕だったら昨年の成績を見て、『もうちょっとだ』とか『本当は上がれたんですけどねえ』とか『チーム事情で上がれなかった』とか言っていたのかもしれません。でも、ホンマは自分の力が足りなかったから上がれなかった。それだけなんです」
「出来ないことを嘆くより、出来ることを」
何かを諦めることで、新たな何かを見つけられる――そんな自分にも気が付いた。
中後には150キロを超える速球も、針の穴を通すようなコントロールもあるわけではない。ただ、他人から変則的と言われる投球フォームと、鋭く曲がるスライダーに多少なりの自信があり、それを磨いた。
「出来ないことを嘆くより、出来ることをコツコツと……」
それでダメだったらまた日本に帰ればいいんだという開き直りが、無駄なプライドを捨てることにもつながっているという。
「僕も、以前はマウンドですぐにイラついたり、目の前のことだけにいっぱいになっていたんです。でも、向こう(アメリカ)に行ってから、それを一切なくそうと思って過ごしてきました。マウンドでも周りを見て、すーっと自然体で入っていけるように。
日本にいたころは登板に合わせて徐々にテンションを上げていって、マウンドに上がるころには、カーッとなっていた自分がいたんです。だけど、今は自然体で“さあやろう”的な感じでね」