プロ野球亭日乗BACK NUMBER
WBCの陣容がほぼ決定、あとは采配。
選手のプライドより勝利を優先せよ。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2017/01/25 17:30
侍ジャパンが監督初挑戦の小久保監督も今年で4年目。WBCにおける「成功」は、世界一奪還以外にありえない。
選手のプライドに気を使いすぎるのはマイナス。
その一方で主力選手を預かるが故に、選手のプライドに気を使い過ぎるのは、逆に勝負にはマイナスになるケースも出てくる。
小久保監督がプレミア12の準決勝で送りバントを躊躇したのは、山田のプライドを傷つけたくないという遠慮がどこかにあったはずだ。おそらくあの場面で黙って打たせられるのは、今のメンバーでは筒香くらいしかいない。あとは4番・中田でも送りバントを命じるしかない。そして中田ではバントの成功率が低いと思えば、プライドを傷つけてでも代打を送って走者を三塁に進める割り切った采配も必要ということだ。
王監督も、原監督も勝つためには非情だった。
過去3大会を取材してきて、第1回大会で指揮を執った王貞治監督も、第2回大会の原辰徳監督も、そういう勝つための非情さを持った監督だった。
出場させる選手の選択から試合に入っての起用、采配では勝負に徹して妥協しなかった。それが故に時には、選手たちから不平不満がでることもあった。しかし勝つことを最大のミッションと考え、必要とあらば選手に嫌われることも辞さず、チームへの献身を求めた。
その非情さがあったから世界一という頂点に立てたのである。
長いシーズンではなく短期決戦で絶対勝利を求められる代表監督の資質とは、選手を使い切るその「冷酷さ」でもあるのだ。
確かに侍ジャパンに集まる28人はスーパースター軍団である。それぞれがチームの主力としてのプライドを胸に、日の丸を背負って集結してきている。ただ、これから3月末までの2カ月間には、彼らのプライドを引き裂くような要求をしなければならない場面が必ずやってくる。
選手に嫌われてでもそれができるか。そこが小久保監督のリーダーとしての、勝てる監督としての資質が問われる場面となるはずである。