炎の一筆入魂BACK NUMBER
目標は10割、200本、1000打点。
鈴木誠也が探す「違うもの」の正体。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/01/16 11:00
昨季は初となる規定打席に到達。打率でリーグ2位、本塁打と打点でリーグ5位と躍進の年となった鈴木。
大谷の練習法から得られた、新たな意識。
大谷は踏み込んだ足へ重心をぶつける意識づけのために行っているが、鈴木は違った感覚を得ることができた。
「(踏み込んだ)左膝が開かなくなった」
シーズン中の悪癖の1つが「体の開きが早くなる」だった。打席の感覚や投手の印象などを記したノートにも、何度も同じ反省が繰り返されていた。頭で理解していても、簡単に体の修正は利かない。
「1つの引き出しとして、シーズン中に悪くなったときに使えるかもしれない」
思わぬ収穫に、大きくうなずいた。
目標は「打率10割、200本塁打、1000打点」。
1球も無駄にしない姿勢が、現状を打ち破るヒントを生む。
1月の打ち込みから打ち損じや、思ったスイングができなかったときには苛立ちを言葉、態度にさらけ出す。プロ入りから、その姿勢は変わらない。だからこそ今がある。
同学年に大谷という存在がいたことも鈴木にとっては大きかった。満たされぬ飢餓感は、底なしの向上心を生み、理想を高くする。
鈴木はあまり数字の目標を口にしたがらない。口にした数字が限界のように感じてしまうのかもしれない。だから、昨年末の契約更改会見で口にした数字で鈴木の胸の内が少しのぞけた気がした。
「打率10割、200本塁打、1000打点」
新シーズンの目標を聞かれ、そう答えた。会見場には笑い声も聞こえてきたが、鈴木の目は笑っていない。「(シーズン)1打席目で凡退した時点で満足していない」は紛れもない本音だろう。