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いつもマリノスと共にあった……。
中村俊輔、心の痛みと新たな旅立ち。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byJFA

posted2017/01/12 17:00

いつもマリノスと共にあった……。中村俊輔、心の痛みと新たな旅立ち。<Number Web> photograph by JFA

12月29日の天皇杯準決勝。マリノスの選手としては、ピッチ上での最後のシーンとなった。

「マツさん、大事なのはやっぱハートだよ」

 中村を語るにおいて、筆者は松田直樹の表現が一番好きである。

「俊輔なんかはパーフェクトの技術を持っているわけじゃん。そういうシュンでさえも『マツさん、大事なのはやっぱハートだよ』って言うんだよ。それを聞いたときうれしかったし、やっぱココなんだなって思えたね。だってシュンが言うんだから」

 木村和司、井原正巳、松田直樹……偉大なOBのマリノスイズムを引き受け、復帰以降の彼はキャプテンとして実践してきた。魅せるとは何か、プロとは何か、勝負とは何か。中村俊輔そのものが、横浜F・マリノスであった。

欧州流? 新しいクラブ経営の方針が示される中で。

 クラブは新しい時代を迎えていた。

 '14年にマンチェスター・シティFCのホールディング会社「シティ・フットボール・グループ」(CFG)とパートナーシップ契約を締結し、昨春からはフロントもCFG主導となった。

 急進的とも思える世代交代を図ろうとし、Jリーグ2連覇を知るGK榎本哲也や、不動の右サイドバックとしてチームを支えてきた小林祐三とレギュラー勢を放出した。3年連続フルタイム出場の中澤佑二には当初、前年比50%減の年俸を提示したという。選手のみならず、長年在籍したトレーナーの契約を打ち切っている。

 選手との意思疎通が十分だとは思えないエリク・モンバエルツ監督のマネジメントもフロントは支持する形となった。

 前年と違ってポゼッションスタイルを志向した2016年シーズンの成績は、2009年以来の2ケタ順位となる10位に終わったが、今季はその成果が出るとフロントは判断したのだと言える。

 欧州流の手法がこれまでのマリノスのやり方や伝統を支配していくなか、中村は選手サイドからの意見、自分の意見を会社側にも伝えてきた。キャプテンとして、長年クラブに携わってきた年長者として。先輩たちも何かあれば会社側に伝えていた。その姿勢を後輩に見せることも、彼の役目であった。

【次ページ】 マリノスの伝統とは何か? 中村の答えは……。

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