ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
世界王者たちにも世代交代の波が。
「U-15」勢の台頭に内山高志は――。
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2017/01/05 11:50
24の白星を積み上げた後に、2つ黒星が続いた37歳の内山高志。引退か、現役続行か、決断が待たれる。
21歳の田中が井上に並ぶ8戦目での世界2階級制覇。
左フックを鮮やかなカウンターで河野のアゴに叩き込み、試合を決した井上は「内容? 70点ですかね」と涼しい顔。対する河野は開口一番「井上くんのジャブは右ストレートのように強かった」と語った。勝者と敗者のコントラストは残酷なほど明確だった。
岐阜では、21歳の田中恒成(畑中)がWBO世界ライトフライ級王座決定戦でモイセス・フエンテス(メキシコ)を下し、2階級制覇を達成した。フエンテスは元世界ミニマム級王者の実力者で、田中はかなり苦戦するのではないかと思われたが、ふたを開けてみると圧巻の5回TKO勝ち。プロ8戦目での2階級制覇は、井上と並ぶ最速記録だ。
京都では28歳の小國以載(角海老宝石)が22勝22KO無敗1無効試合のIBF世界スーパーバンタム級王者、ジョナタン・グスマン(ドミニカ共和国)から強烈なボディーブローでダウンを奪い、文句なしの判定勝ちで“怪物退治”を完遂した。
のし上がる若手と、生き残りをかけるベテランの1年に。
世代交代─―。
古き者が去り、新しき者にその座を譲る。当たり前の摂理とはいえ、こうまざまざと見せつけられると、スポーツとは厳しい世界なのだとあらためて感じさせられる。
世界戦ではないが、田中の前座で、元WBA世界スーパーバンタム級王者の32歳、下田昭文(帝拳)が日本フェザー級王者の29歳、林翔太(畑中)に敗れた。長らく日本ボクシング界をけん引してきた内山、河野と並ぶ下田の敗戦も、世代交代を印象付ける結果だった。
これからは井上、田中を中心とした若い世代がボクシング界をリードしていくのだろう。
日本プロボクシング協会がジュニアを対象としたU-15全国大会を2008年に発足させて以降、若手の台頭が目覚ましい。ちなみに井上は第1回大会の優勝者。中学3年生だった。いわゆる「U-15」世代が今後、続々と出てくると予想される。
そのほかの3試合では、IBF世界ライトフライ級王者の八重樫東(大橋=33歳)、WBA世界フライ級王者の井岡一翔(井岡=27歳)、WBA世界ライトフライ級王者の田口良一(ワタナベ=30歳)がそれぞれ防衛に成功した。12回TKOで勝利した八重樫が「なんとか生き残ることができた」と胸をなでおろす姿が印象的だった。
2017年のボクシング界は、のし上がろうとする若手と、生き残ろうとするベテランが切磋琢磨する1年となりそうだ。だれが台頭するのか、だれが脱落するのか。激動の1年が幕を開けた。