ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
世界王者たちにも世代交代の波が。
「U-15」勢の台頭に内山高志は――。
posted2017/01/05 11:50
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
2016年の年の瀬に日本各地でボクシングのビッグマッチが開催された。世界タイトルマッチは東京、岐阜、京都で計7試合。悲喜こもごもの試合を振り返ると─―。
「リベンジ」をテーマにリングに戻ってきた前WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者の内山高志(ワタナベ)は現スーパー王者ジェスレル・コラレス(パナマ)に1-2の判定で敗れ、王座返り咲きに失敗した。
スコアは割れ、ジャッジ2人は117-110、115-112でコラレスの勝利を支持。ジャッジ1人は114-113で内山の勝利としたが、内山がダウンを奪って10-8で取った第5ラウンドは、映像で確認するとパンチが当たっているようには見えず、ここを差し引くとさらに内山の勝利は遠のく。個人的にも内山がコラレスのスピードと老獪さにしてやられたという印象だった。
前回4月の試合はまさかの2回KO負け。そして今回がフルラウンド戦っての判定負け。試合後、報道陣が山のように詰めかけた控室で、内山は思いのほかサバサバとした口調でこう言った。
「不完全燃焼じゃないけど、もっと出し切れたかなとは思いますね。でも、前回よりもさっぱりといえばさっぱりしてますね。ポイントで負けたので」
内山は前回敗れた反省を生かし、対策をしっかり練って試合に臨んだ。ディフェンスへの意識は、キャリアの中で最も高かった。「何もしないうちに負けた」第1戦では「油断」というエクスキューズが説得力を持ったが、今回それはない。37歳の内山にとっては厳しい現実が突き付けられた形だ。
河野のファイトは心を打ったが、井上は強かった。
23歳の若き日本のエース、WBO世界スーパーフライ級チャンピオンの井上尚弥(大橋)は36歳の元世界王者、河野公平(ワタナベ)に6回TKO勝ちした。
その強さゆえに対戦相手選びに苦労している井上の前に、自ら手を上げて立ち向かった河野。「勝てっこない」と目された一戦で勇敢に井上に挑み、右ストレートを何度も打ち込もうとした“雑草”のファイトは見る者の心を打った。その一方で、若き王者がまったく河野を寄せ付けず、勝利を手にした試合でもあった。