松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER

松山英樹が言う「たまたま」の意味。
土台+勝負という方程式が完成間近。 

text by

舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

PROFILE

photograph byAFLO

posted2016/12/30 17:00

松山英樹が言う「たまたま」の意味。土台+勝負という方程式が完成間近。<Number Web> photograph by AFLO

松山英樹のコメントは、時にぶっきらぼうだ。しかしその後ろには、豊かな思考と試行錯誤が隠れているのだ。

ショット、とりわけアイアンこそが土台になる。

 特別な意識をすることなく、特別な修正や矯正を加えることなく、当たり前のように思い通りのショットができる安定性。それがどっしりとした土台となる。

 その強固な土台の上で、あとはパットが入るか、入らないか、それが勝敗や成績の分かれ目になる。

 そして、パットが入りさえすれば、勝つ。勝利への方程式をそんなふうにシンプル化することが、突き詰めれば松山の目指すところなのだろう。

 ショットの安定性を上げること、とりわけアイアンショットの精度を向上させ、バーディーチャンスを最大限に創出することが何よりのカギになる。昨季、大前提となるショットの安定性についに手ごたえを感じたのが、シーズン最後のメジャー、全米プロ。しかし、あのときは、土台は強固になったものの、「伸ばすためのパットが入らないと勝負にはならない。それが、今の実力、そこが、これからの課題」と言っていた。

 その課題をクリアする形になり、土台となるショットと勝負を決めるパットの双方が融合し始めたのが、日本オープンを皮切りに次々に勝利を挙げた10月、11月の5戦4勝だった。

方程式がシンプルになればなるほど。

 昨季の松山が、結果に関わらず苦々しい表情で口にしていた「たまたま」という4文字は、振り返ってみれば、偶然や偶発、あるいは突然変異を意味していたのではなく、「自分の理想形と合致していない」という意味だった。

 言い換えれば、自分の理想形に合った戦い方ができれば、当然のように何かが起こる、起こしてみせる。そういう意味が込められていたのだと今は思える。

 松山自身のゴルフの土台が固まりつつある今、そしてこれから迎える2017年は、その土台を維持・向上できれば、「たまたま」は激減するだろう。

 勝てるかどうかは、パット次第。そんなふうに勝利への方程式がシンプルになればなるほど、松山はさらなる勝利へ、メジャー優勝へと突き進んでいく。

「マスターズで勝つのが夢です」

 松山がその夢をシンプルに追い求める準備は、今、すっかり整っている――。

BACK 1 2 3
#松山英樹

男子ゴルフの前後の記事

ページトップ