松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹が言う「たまたま」の意味。
土台+勝負という方程式が完成間近。
posted2016/12/30 17:00
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
AFLO
10月半ばからのほぼ2カ月間で5戦4勝を挙げ、世界のゴルフ界を驚かせた松山英樹。だが、その快進撃は突然変異では決してない。喜びもあったが、苦悩することのほうが多かった松山の米ツアー2016年シーズンを振り返れば、5戦4勝の快進撃は忍耐と努力の末に起こるべきことがようやく起こったことだと思えてくる。
松山の昨季を振り返ると、まず思い出されるのは米ツアー通算2勝目を挙げた2月のフェニックスオープンだ。
TPCスコッツデールの大観衆が「USA! USA!」と連呼しながらリッキー・ファウラーに声援を送る中、プレーオフ4ホール目で勝利を飾った松山。
「ベストを尽くすことだけを考えた」
優勝を遂げたことには喜びを感じている様子だったが、感涙や興奮を見せることはなく、むしろバーディーパットを外したものの勝敗が決着したプレーオフ4ホール目を自嘲気味に振り返りながら、「最後は『何だあれ?』って感じ。終わり方が良くなかったので負けた人みたいな感じがあるけど、ああいう勝ち方もあるんだなあ」と、しみじみ。
そして、こんな言葉を続けた。
「今年中に2勝目と思ってやっていた中、思わず優勝できた。次はメジャーを目指して頑張りたい。まだまだやるべきことは多い」
松山の米ツアー2勝目に日本のファンが沸き返っていたあのときでさえ、実を言えば、松山自身は満足しきってはいなかった。
マスターズ、プレーヤーズ選手権で優勝争い。
それから2カ月後。4月のマスターズで松山は優勝争いに絡んだ。
首位を走っていたジョーダン・スピースが最終日の後半に崩れ始めたことで松山にも優勝のチャンスが巡ってきたが、松山はそのチャンスを活かしきれず、7位に終わった。
5月には「第5のメジャー」と呼ばれるプレーヤーズ選手権で最終日を最終組で迎え、再び優勝争いに絡んだ。だが、ジェイソン・デイが堂々の完全優勝を飾った傍らで、松山はデイに6打差の7位に終わり、悔しさを噛み締めながら18番グリーンを降りていった。