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松山英樹が石川遼に「行っちゃえ!」。
2人がゴルフ少年に戻っていた4日間。 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byAP/AFLO

posted2016/12/15 08:00

松山英樹が石川遼に「行っちゃえ!」。2人がゴルフ少年に戻っていた4日間。<Number Web> photograph by AP/AFLO

周囲は松山英樹と石川遼をライバル扱いしたがるが、それ以上に2人は同じ道を歩む「同志」なのだ。

30秒以上迷ってから、ドライバーを振りぬいた石川。

 実際の試合中、2人の心の持ちようの違いを、象徴する場面があった。

 1つのボールを交互に打ってスコアを作るオルタネート(フォアサム)形式で行われた3日目の13番ホール。構造上、観衆が限られたティグラウンドで、同じ組のフランスチームが第1打を放ったあと、日本チームは長い時間考えを巡らせていた。

 冷たい南風が追い風になるこのパー4は370ydと短く、ビッグドライブが決まればグリーンの手前までボールを運ぶことができる。ただし、右サイドには深いブッシュが連なり、入れてしまえば大トラブル。10秒、20秒……と時間が経過していく中、このホールでティショットを担当する石川がクラブ選択を迷っていた。30秒経ってもまだ動く気配がない。

「どうする?」と言った石川に、佐藤賢和キャディはアドバイスした。「アイアンで打っても、(松山が)短い距離から打てるよ」。日本は直前の12番、スコアを伸ばしたいパー5でバーディを取れなかった。流れを悪い方に引きずらないための安全策の進言だった。

 キャディバッグを覗き込み、石川は4番アイアンを引き抜こうとした。

 だが次の瞬間、JAPANと入ったヘッドカバーにおさまったドライバーを握り、覚悟を決めたかのように素振りを始めた。

 よどみなく振りぬいたショット。ボールは硬いフェアウェイをヒットし、グリーンエッジまで21ヤードのポジションに運ばれた。松山の見事なアプローチを経て、石川が2メートルのバーディパットを沈める。逸しかけた流れを引き戻すホールになった。

松山がかけた「行っちゃえ」の一言。

 最終日に逆転優勝のチャンスを残すターニングポイントを振り返り、「あそこで右のブッシュに入れていたら、試合は終わっていた」と胸をなでおろした石川。日本チームが取ったその積極策、このクラブ選択は実はパートナーに後押しされたものだった。

「あの場面は……全然、(アイアンで)刻んでも良かったんですよ。でも(石川に)僕はまず、『自分が良いイメージが出る方のクラブで打つのが良い』と言った」と松山が明かす。

「でも、遼は迷ってたから……迷ってアイアンをポンっと触ったから言ったんです。『行っちゃえ!』って。あそこでしっかり打ってくれたから、あした(最終日)が、すごく楽しみになりましたよ」

【次ページ】 かつては、攻めるゴルフが石川の代名詞だった。

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