リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
バルサの中盤軽視がいよいよ危険?
イニエスタだけが守るペップイズム。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byAFLO
posted2016/12/07 17:30
グアルディオラのエッセンスは、イニエスタに凝縮されている。MSNが今の強さの源だとしても、バルサの原点は彼にこそあるのだ。
パスコースは減り、3トップに渡すだけの存在に。
果たしてクラシコが始まると、最近の試合同様、バルサに中盤は存在しなかった。
いや、もちろん実際はブスケッツ、ラキティッチ、アンドレ・ゴメスが並び立ち、攻撃時には両サイドバックも加わってボールを繋ごうとするのだが、いかんせん、何も起きない。ボールホルダーの周りに以前は3本から4本用意されるのが常だったパスコースはせいぜい2本に減り、パスの出し手と受け手の距離も広がっている。だからマドリーの守備壁に亀裂を入れるための効果的なパス廻しができない。
あったのは、ただボールを前に運ぶという意思だけ。自然、攻めは拙速になる。
試合後日、昨今のプレイスタイルを問われたセルジ・ロベルトはこう答えていた。
「変わってはいない。けれど時々一直線に攻め入ろうとしてしまうのも確かだ」
それでもここ数年のバルサを見てきた人なら「MSNがなんとかしてくれるだろう」と思うに違いない。
バルサの中盤を復活させた、途中出場のイニエスタ。
しかし中盤がかつてのように機能しないこともあって、シュートを放つ機会が減っており、スリートップの得点は13節までで21。11月の3試合だけを見るとわずか3。昨季は故障に遭ったメッシが5試合欠場したにも拘わらず26得点していた。
クラシコの前半も、放ったシュートは2本のみで無得点。
試合の主導権を握って攻めて勝つチームにとって、これは由々しき事態である。
だが後半、バルサは面目を保つことができた。10月22日のバレンシア戦以来故障中だったイニエスタがピッチに戻ったおかげで。
かつてメッシやブスケッツと共にポジショナルプレイの中心にいた彼は、ドリブルをもって敵の守備バランスを崩し、パスを受けては“ため”を作って周りの選手にポジションを正す時間を与え、中盤を整えた。
ブスケッツなど、前半は仲間のカバーと不要なスペース潰しに東奔西走していたが、イニエスタが入った後はセンターサークル付近にほぼ留まっていられたほどだ。
そして、ネットを揺らすには至らなかったが、ネイマールとメッシには決定的なゴールチャンスが訪れた。