Jをめぐる冒険BACK NUMBER
鹿島の勝負強さの源は「思い込み」?
選手が語った単純すぎる理由とは。
posted2016/11/24 12:20
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Kiichi Matsumoto
金崎夢生のヘディングによるゴールで均衡が崩れたあとの約40分は、それ以前に増して見ごたえのある攻防が繰り広げられた。
ピッチに描かれたのは主に、攻める川崎フロンターレ、守る鹿島アントラーズという構図だ。
三好康児のパスによって抜け出した中村憲剛が昌子源のタックルを切り返してかわせば、ファン・ソッコが懸命に体を投げ出し、中村のシュート精度をわずかに狂わせる。
川崎が登里享平を投入して左サイドからの攻撃の圧力を高めれば、鹿島はボランチの永木亮太を右サイドに出し、川崎の左サイドバック、車屋紳太郎の攻撃参加を牽制する。
昌子源は、登里のパスコースを読みきっていた。
なかでも最も痺れたのが、71分の攻防だった。
車屋のヒールパスを受けた登里が3人のマークを振り切って、ペナルティエリアに切れ込んでいく。ゴール前には大久保嘉人が走り込み、マイナスのポジションには三好と中村が待ち受ける。
選択肢はふたつ。いわゆる“詰んだ”状態の決定的な場面。登里はGKとDFの間に出すと見せかけて、三好へのマイナスのクロスを選んだが、GKの前にいた昌子はまるで予期していたように、登里から出たパスをインターセプトして見せた。
「ノボリくんの顔しか見ていなかった。そうしたら、俺とソガさん(GKの曽ヶ端準)の間しか見ていなかった。あんなに見ていて、そこに出す人はおらんだろうと。それで100%マイナスに出すだろうと読んだんです」
ゲーム終盤の緊迫した場面で、この冷静さ、この落ち着きよう。大一番に強い鹿島というチームの真髄を見た気がした――。
11月23日に行われたJリーグチャンピオンシップ準決勝は、鹿島が1-0という、いかにも“鹿島らしい”スコアで川崎を下し、浦和レッズの待つ決勝に進出した。