Jをめぐる冒険BACK NUMBER
鹿島の勝負強さの源は「思い込み」?
選手が語った単純すぎる理由とは。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byKiichi Matsumoto
posted2016/11/24 12:20
A代表にも呼ばれ続けている昌子源。鹿島の選手が持つ独特の雰囲気を、彼もすでに身にまとっている。
不本意な形で投入させられた痛恨のアクシデント。
敗れた川崎に関して、残念だった点をひとつに絞って挙げるなら、中村憲剛という“カード”の切り方だ。
7月と10月に負った足首のケガと肉離れが完治せず、復帰が遅れていた中村は18日に練習に合流したばかり。それゆえにこの試合ではベンチスタートになった。
ピッチサイドに登場するだけでスタジアムのムードを一変できる中村は、後半の勝負どころで投入すれば、最高の“ジョーカー”になるはずだった。
ところが、21分に長谷川竜也が負傷退場となった際、交代選手として選ばれたのは中村だった。これで流れと雰囲気を一変させられる切り札を失ったばかりか、中村自身、準備運動をすることなくピッチに立ったため、エンジンが掛かるまで時間を費やしてしまった。ほかの選択肢――森谷賢太郎や森本貴幸など――はなかったものだろうか。
もっとも、これは結果論であり、やはり称えるべきは鹿島の勝負強さだろう。
ファーストステージは川崎を抜いて逆転優勝を飾ったものの、セカンドステージでは監督の退任騒動などの影響もあって低迷し、最後は4連敗を喫して11位に終わった。
ところが、リーグ最終節から約3週間、ヴィッセル神戸を下した天皇杯4回戦での勝利も含め、チャンピオンシップに向けてチームをしっかりと立て直し、予定調和とも言える1-0の勝利を収めた。
鹿島がここ一番で強いのは「勝負強い」と言われるから。
なぜ、鹿島はここ一番に強いのか――。
その答えとして、強化の最高責任者を務め、ピリッとした雰囲気を作る鈴木満強化部長の存在を挙げた選手もいれば、リーグ最終節のあとで行なった決起集会の効果を明かす選手もいたなかで、妙に納得してしまったのが、土居聖真のこんな言葉だ。
「そう(勝負強い)言われるからじゃないですか」
メディアをはじめ、周囲から「鹿島は勝負強い」と言われ続けているから、「自分たちは勝負強い」と刷り込まれていくというのだ。
「僕なんかは特にジュニアユース、ユースといるから、誰に教えられたわけじゃなく、やらなきゃいけないんだっていうのを感じさせられます」
似たようなことを、選手会長を務める西大伍も口にした。
「サッカーに関わる人だったらみんな、鹿島は勝負強いという意識があるわけじゃないですか。それを僕も、歴史があるからですけど、信じてやれるのが大きいと思います。みんな、言いますから、そうなんだと。思い込みじゃないけど、そういう全体での意識というのは大事だと思います」