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鹿島の勝負強さの源は「思い込み」?
選手が語った単純すぎる理由とは。 

text by

飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2016/11/24 12:20

鹿島の勝負強さの源は「思い込み」?選手が語った単純すぎる理由とは。<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

A代表にも呼ばれ続けている昌子源。鹿島の選手が持つ独特の雰囲気を、彼もすでに身にまとっている。

試合前、昌子は2009年の浦和戦の映像を観ていた。

 自分たちは勝負強いという、いい意味での思い込み――。これをピッチに立つ11人、いや、チーム全員が共有しているのだとしたら、鹿島は強いわけだ。

 歴史の重みを感じさせる興味深い話が、もうひとつある。

 試合前、普段は好きな音楽を聞くという昌子は、この日はなぜか、ある試合の映像を眺めていたという。

 その試合とは、2009年のJ1リーグ最終節、敵地で浦和レッズを1-0で下し、前人未到のリーグ3連覇を成し遂げたゲームである。

「これが鹿島なんだなっていう試合。興梠(慎三/現浦和)さんがゴールして、苦しいのを全員で守っていた。なかでも岩政大樹(現ファジアーノ岡山)さんの存在が際立っていて、自分が(岩政が付けていた)3番を背負っている以上、踏ん張らないといけないと思った。なんで観たのか分からないけど、1-0で最後のほうは苦しい展開になると予想していたから、観ておこうと思ったんだと思う」

 アウェーゲームを1-0で勝ち切ってタイトルを掴み取った歴史が、クラブにはある。そのときにはまだ在籍していなかった選手が、その映像を見てイメージをつくりあげ、自身を奮い立たせる――。

 ここにもまた、鹿島に根付く伝統、DNAの正体があった。

小笠原の顔には、笑みひとつなかった。

 この試合に勝利した鹿島が手にしたのは、浦和への挑戦権であって、タイトルではない。だが、そんなことは百も承知だと言わんばかりに、キャプテンの小笠原満男は、笑みひとつなく、勝者には似つかわしくない表情で反省の言葉を口にしたあと、こう言って囲み取材を締めた。

「次負けたらなんの意味もないので、しっかり勝ちたいと思います」

 終了のホイッスルは、次なる戦いの開始の合図――。ホームで浦和を迎え撃つ29日の決勝第1戦に向けて、すでに臨戦態勢に入っているようだった。

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