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失意の帰国からイラク戦劇的弾へ。
山口蛍、激動の1年はまだ終わらない。
text by
原山裕平Yuhei Harayama
photograph byKiichi Matsumoto
posted2016/11/22 16:50
J1昇格の残り1席を巡ってのプレーオフでは、松本山雅、セレッソ大阪、京都サンガ、ファジアーノ岡山が競う。
代表では、守備だけでなく攻撃でも大いに貢献。
立ち上がりからアグレッシブな姿勢を見せた日本において、山口の守備力が重要な役割を担っており、とりわけボールを奪われた後の果敢なチェイシングは、サウジアラビアの反攻の芽を摘むとともに、日本のショートカウンターを導く要因となっていた。
悔やまれるのは終盤の失点場面だろう。相手の突破を食い止められず、得点機を与えてしまった。
試合後、足早にミックスゾーンを立ち去ったのは、自らの失態に打ちひしがれていたからなのかもしれない。
2016年の山口蛍の運命を一気に変えた、あの一撃。
挑戦、挫折、負傷、失意……。
まさにネガティブな要素に満ちていた山口の2016年を、一気にポジティブなものに変えたのが10月6日のイラク戦での劇的な決勝ゴールだったのは間違いない。あの一発でチームを救って以降、山口はオーストラリア戦、オマーン戦、そしてサウジアラビア戦と全試合に出場。フルタイム出たのは、フィールドプレーヤーでは山口のみだ。
もちろん、サウジアラビア戦の失点場面に象徴されるようにまだ絶対的な安定感を備える選手にはなりえていない。とはいえ、清武弘嗣、原口元気、大迫勇也とともに、今の代表における世代交代のキーパーソンであることは、もはや誰もが認めるところだろう。わずか半年でドイツから帰ってきた山口を“負け犬”と批判したファンも、厳しい言葉を投げかけた代表チームの指揮官でさえも。
山口の2016年はまだ終わっていない。
自動昇格の道を断たれたC大阪は、J2リーグで4位となり、昇格プレーオフで残り1枠となったJ1昇格切符の獲得を目指している。
昨年もC大阪はこのプレーオフに進出しながら、決勝でアビスパ福岡と引き分けて(規定により福岡がJ1昇格)涙を呑んだ。山口の心に引っかかっていたのは、チームを昇格させられなかったという事実である。この1年、山口はその重い十字架を背負って戦ってきた。
愛するクラブをJ1へ――。
激動の2016年を、山口は果たして笑顔で締めくくれるだろうか。
来年3月に控える次なる代表戦の前に、この男の本意を知っておくためにも必読の記事ですので……ぜひ書店でお手にとってみて下さい!