プロ野球亭日乗BACK NUMBER
武田のカーブ、千賀のフォークが……。
メジャー球で削がれた侍Jの投手力。
posted2016/11/11 12:50
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Naoya Sanuki
まるで別人だった。
来年3月に行われる第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に向けた日本代表・侍ジャパンの強化試合。その第1戦のメキシコ戦に先発した武田翔太(ソフトバンク)がマウンドで四苦八苦していた。
武田は昨年のプレミア12でも主戦投手としてローテーションを担った侍ジャパンの軸の投手だが、この日の投球はプレミア12で見せた安定感とは異質の内容だった。
理由は、以前から言われている米ローリングス社製のメジャー球への対応だった。
実は昨年のプレミア12では、レギュラーシーズンで使っている日本の統一球に近いミズノ社製の国際球だった。ところがこの強化試合ではWBCの本番で使うメジャー球が使われている。
その違いへの戸惑いだった。
立ち上がりにいきなり先頭のナバーロに初球を左前に叩かれると、2番のペーニャには抜けたカーブを右中間に二塁打された。さらに3番のキロスにも1、2球目のカーブが指にかからずにボールが2つ。フルカウントまで持ち込んだが、最後もカーブが抜けて四球を与えて満塁のピンチを招いた。
結果的には後続を3者連続三振に抑えてこのピンチは切り抜けたが、4回にはやはりカーブが抜けて1死からカスティーロに四球を与えて、暴投、遊失などの一、三塁から7番・ベルドゥーゴに一塁線を破られ同点に追いつかれた。
武器のドロップカーブはコントロールがきかず。
「いつもより滑るというのはありましたが、途中から調整して投げられたとは思います」
試合後の武田のコメントだ。
確かに、途中からフォークを有効に使って相手打者を抑え込めたのは収穫だった。ただその一方で、20球近く投げた武器のドロップカーブは、半分近くが抜けるか、抑え込もうとしてワンバウンドになるなど最後まで思うようにコントロールできていなかった。
要は球種によってボールがなかなか手につかない。そこでどう適応していくか、改めてメジャー球への対応の難しさが浮き彫りとなった形だったのだ。