濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
武尊は魔裟斗以来のK-1スターになる。
2階級制覇で見せた強さ、カリスマ性。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakao Masaki
posted2016/11/10 11:00
ムーブメントを生むためには、競技の枠を超えて輝く選手は必須だ。現在のK-1界にとって、武尊はその役割を担える唯一無二の存在である。
「2階級制覇をやるのが、スーパースターなんで」
さらに「K-1代表として、K-1をもっと広めてきます」と大晦日のRIZIN参戦をアピールした武尊。ケガがあるため出場できるかどうかは微妙だが、観客へのアピールとしては100点のマイクだった。試合ぶりから言葉の操り方まで、文句なしのスター性。「SPがいないと道を歩けないくらいになりたい」と言う若者は、その野望に着実に近づいている。
2階級制覇を狙ってのトーナメント出場は、いかにもな“負けどき”だと考えることもできた。大きすぎる野望を抱いた若者が挫折を味わい、そこから出直すことで大人のファイターになっていく。そういう展開は、実によくある。むしろそうなるのが普通だ。
しかし武尊は“普通”の範疇などには収まらないのだった。いわく「(2階級制覇は)有言実行しました。それをやるのがスーパースターなんで」。プロで喫した黒星はわずかに一つ。K-1では全勝。破格の強さととびきりの笑顔でファンを虜にしながら、彼はK-1に新たな黄金時代をもたらすことになる。「だろう」ではない。断言していい。