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相手のフリースローを外させる観客。
Bリーグ栃木ブレックスの熱が凄い。 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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posted2016/10/29 11:00

相手のフリースローを外させる観客。Bリーグ栃木ブレックスの熱が凄い。<Number Web> photograph by Getty Images

Bリーグが発表しているツイッターランキングでも、アルバルク東京と栃木ブレックスは1位と2位の人気チームだ。

この日の観客動員数は超満員の4035人。

 この週末、Bリーグの初代王者の行方を占う対戦は1勝1敗に終わった。あれだけの好ゲームをみせながら、日曜日の試合で逆転負けを喫した。

 では、栃木のファンは悲しみに打ちひしがれたのだろうか。失望したのだろうか。

 試合後にトーマス・ウィスマンヘッドコーチは、彼らの存在について胸を張った。

「負けはしましたけど、素晴らしいバスケットのゲームでした。今日、会場に足を運んでくれたお客さんは、このゲームをみて、楽しんでいただけたと思います。そして、また戻ってきてくれると思います。これは世界の終わりではないので」

 超満員となったこの日の観客動員数は4035人だ。サッカーや野球に比べれば少ない。ただ、立見の自由席のチケットさえ売り切れたのも事実だ。栃木にとっては新記録であり、今後はいかにして動員数を増やしていくのか。新しいアリーナの建設も含めた拡張のプランに頭を悩ませないといけない恵まれた状況にある。

 副キャプテンの渡邉はこう話す。

「入場者数がどうだとか、とにかく人が入ればいいというわけではないと思う。あれほどまでにファンの方も一体になれるというのは、この体育館、このチームでなければ味わえないことなので。うちのアリーナの雰囲気は、クラブが積み上げてきた歴史とか、ファンの人たちの歴史そのもの。それは他のチームには負けないと思います」

 観客も一緒に戦え。ブレックス栃木はファンにそう求める。だからこそ、最高の雰囲気が生まれる。

ブレックスアリーナの熱量は規格外。

 余談だが、筆者は、世界で最も観客が多いサッカー競技のなかでも、最も多くの観客を集めるボルシア・ドルトムント(昨シーズンのリーグ戦の平均観客動員数は80761人)のあるドルトムントという街に住んでいた。その2年間を含め、ドイツにいた8年弱の間におよそ100試合近くスタジアムで取材をしてきた。動員数でも熱量でも世界最高のファンに囲まれたなかでペンを走らせてきたのだから、少しくらいの熱では動じない。

 しかしそんな筆者でも、心を揺さぶられるだけの熱量がブレックスアリーナには確かに存在した。

 ブレックスが積み上げてきた歴史があり、支える人たちの息遣いが目や耳で感じられる距離にいて、ファンが試合に『参加』する。だから、一介の記者でも、その空気に飲み込まれてしまう。

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