セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
S・インザーギが蘇生させたラツィオ。
C・ロペス、クレスポも戦友に期待大。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2016/10/21 08:00
ラツィオのレジェンドの1人であるシモーネ・インザーギは、指導者としてもユースからラツィオ一筋だ。
多彩なシステムで、ついたあだ名は「錬金術士」。
一方で、インザーギは監督として初めて挑むセリエAのフルシーズンに向けた戦術的研究も欠かさなかった。
開幕戦から7節までに4-3-3、3-4-3、3-5-2、3-4-1-2、4-1-4-1といった5つのシステムを試したインザーギに、現地メディアは「錬金術士」という異名を謹呈した。
監督自身と選手たちの若さと柔軟な姿勢が、頻繁な変化への対応を可能にしたのだ。
開幕直後、王者ユベントスに挑んだ2節の大一番には3-4-3で臨み、ボールポゼッション率で上回りながら0-1で惜敗した。
そこから試行錯誤の末に立ち直り、最終ライン前にMFパローロをアンカー役に置いた7節ウディネーゼ戦では、FWインモービレがドッピエッタ(=1試合2得点)を達成し、FWケイタも追加点の活躍で3-0と快勝。一度はEL出場圏に躍り出た。
ただし、2位獲りの欲をかいたボローニャ戦では、“若さ”が裏目に出た。
開始10分のセットプレーで先制され、守りを固めた相手に対し、ラツィオの中盤はパスの繋ぎが雑になった。
攻めに攻めまくったのは間違いない。だが、ドリブルを仕掛けたFWケイタは3人に囲まれ、苛立ったFWインモービレとMFアンデルソンは相手を突き飛ばしてそれぞれイエローカードを出された。97分のPKさえなければ、ラツィオは63%のボールポゼッションと18本のCKを記録しながら危うく敗れるところだった。
クラウディオ・ロペス、クレスポらが集結。
12日、オリンピコで行われたチャリティマッチに、ラツィオ歴代の個性派FWたちも集った。
エリクソンに率いられた黄金時代を過ごした彼らは、かつての戦友インザーギへエールを惜しまない。
「シモーネのラツィオ監督就任は嬉しいニュースだった。近年の低迷を打破してくれることを祈る」とクラウディオ・ロペスが言えば、クレスポ(前モデナ監督)も「ラツィオの置かれた環境の中でシモーネはすごくいい仕事をしている。いつかは自分もラツィオのベンチに座ってみたい」と続く。彼らOBも古巣の復活を期待しているのだ。
チーム全体の目標である欧州カップ戦復帰のためには、首位ユベントスを始めとする上位陣を叩く必要がある。来年1月の再戦に向け、インモービレらは王者への刺客とならねばならない。
「(ボローニャ戦では)2位が狙えただけに悔いが残る。ただ、選手たちが最後まで闘ってくれたことには満足している。前を向いていくさ」
ラツィオの青年監督インザーギは、かつて自分がそうだったように若手FWたちと仕切り直しを誓った。立ち直りの早さも、若さの特権だ。