イチ流に触れてBACK NUMBER
最高のチームメイトを失ったイチロー。
フェルナンデスに送った最後の言葉。
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2016/10/13 11:30
フェルナンデスの出棺式の後、最後のメッセージを壁に記すイチロー。
「(イチローは)俺にとっては神であり……」
フェルナンデス投手にとってもイチローは別格の存在だった。
15歳の時にキューバから4度目の脱出で亡命に成功した右腕は18歳上のイチローについて「俺にとっては神であり、我々のアイドル(憧れ)。野球への取り組み方を尊敬するし、このチームにもたらしてくれたものは素晴らしい」と、常に敬意を示してきた。
そのフェルナンデスがイチローに毎日のようにかけてきた言葉があったと言う。イチローが教えてくれた。
「ホゼはいつも『1日でいいから僕みたいになりたい』と言ってくれたんですよね」
フェルナンデス投手も実はある夢を持っていた。
「いつか外野を守って、打者として活躍し、チームの勝利に貢献したいと思っているんだ」
フェルナンデスがイチローにいつもかけていた言葉。
今季も7月1日のブレーブス戦では延長12回に代打で登場すると決勝の2点適時打を放つなどその打棒は折り紙付きだった。今季の打率は.250。メジャーでの二刀流を夢見ていたひとりの選手だった。
その彼がイチローにかけてきたもうひとつの言葉がある。毎日同じ時間になると試合への準備を始めるレジェンドに決まってかけた言葉とは――。
「いつも彼は僕が(専用)マシーンで準備をしていると『You are the best』って言っていたんですよね」
フェルナンデス投手とイチローが共有する同じ価値観。まさに一流は一流を知るということか。
彼の死から3日後。全選手立ち会いのもとマーリンズパークでフェルナンデス投手の出棺式が営まれた。
チームリーダーのプラードは泣き崩れ、同じキューバ出身の遊撃手ヘチャバリアは号泣し、イチローも目を赤く染め沈痛な面持ちで別れを告げた。