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DeNAの“もっと評価されるべき”捕手。
新人・戸柱恭孝の密かなる貢献度。
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/10/05 11:30
戸柱は球団初のCS進出を決めた9月19日の広島戦でも扇の要を務め上げ、ラミレス監督と勝利のハイタッチをかわした。
「スッパマン!」アピールは謎だったが定位置確保。
のそのそとした足取りで歩み出てきたのはドラフト4位の新人、戸柱恭孝。監督から「将来、セ・リーグでナンバーワンのキャッチャーになれる」と紹介された戸柱は、「新人でプロ野球のことはまだ全然分からないんですけど、ぜひ応援よろしくお願いします」と生真面目に挨拶した。
マジメ一本槍の男でないことが判明するのは、壮行会が終わりに差しかかった時だった。主将の筒香嘉智に「僕がご挨拶させていただく前に、ルーキーの戸柱さんからちょっとアピールしたいことがあるそうです」と不意に名指しされると、戸惑いながら一言、「いきます……。梅干し食べて、スッパマン!」と謎のアピール。顔を赤くしながらもファンの笑顔を誘っていたのが印象的だった。
無事に開幕スタメンを勝ちとり、3戦目で今季のルーキー一番乗りとなるプロ初本塁打をマーク。だがチームはなかなか波に乗れず、キャッチャーフライの落球などが目につくようになった新人捕手に批判の矛先が向かいかけた。
「試合に出してもらっている以上……」という自覚。
それでも戸柱は耐えきった。ラミレス監督の我慢強さと、おおむね週に1試合は高城を起用して適度な休養を与える方針が奏功した面もあっただろう。シーズンを通して、「一軍捕手としての及第点」を下回ることはなかった。
戸柱はよく、こんな言葉を口にする。
「試合に出してもらっている以上は……」
その後に続くのは、日によって「疲れたなんて言ってられない」であったり、「1年目だとか関係ない」であったり。経験の浅さを逃げ口上とせず、毎日のように実戦を積むチャンスを与えられている者の自覚があった。