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DeNAの“もっと評価されるべき”捕手。
新人・戸柱恭孝の密かなる貢献度。 

text by

日比野恭三

日比野恭三Kyozo Hibino

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2016/10/05 11:30

DeNAの“もっと評価されるべき”捕手。新人・戸柱恭孝の密かなる貢献度。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

戸柱は球団初のCS進出を決めた9月19日の広島戦でも扇の要を務め上げ、ラミレス監督と勝利のハイタッチをかわした。

関係者も口々に「もっと取り上げられていい」。

 8月のはじめ、2年目のクローザー山崎康晃が連夜、打ち込まれた。戸柱は機を見てマウンドへ駆け寄り、ミットを構えてからも胸を叩いて「強気で来い」のメッセージを山崎に何度も送った。それでも現実は甘くなかった。3試合連続失点からの巻き返しを期した8月5日、ドラゴンズの平田良介に走者一掃の逆転打を浴びた。試合後、戸柱は自らに言い聞かせるようにつぶやいた。

「(マウンドへ駆け寄った時に言ったのは)最後なんで集中して投げろよ、と。ヤス(山崎)は何も悪くない。ボールの威力は全然問題ないですし……。大丈夫っすよ、あいつは。そういう男なんで」

 投手が苦しい時は同じだけ苦しいのに、投手が脚光を浴びる時は陰に隠れてしまう。球団関係者が「戸柱はもっとメディアに取り上げられてもいいんだけどね」とこぼすのを何度か耳にしたこともある。右も左も分からぬままに歩み始めた1年目、終わってみれば一度も戦線離脱することなく124試合に出場を重ねた。昨季68あったチームの暴投数は39にまで激減した。戸柱はまぎれもなくCS出場の“陰の功労者”だ。

 もちろん課題を挙げればキリがない。2割に終わった盗塁阻止率、失策10、捕逸8といった数字は改善の余地がある。2割台前半だった打率も、もっと上を目指せるはずだ。

 だがそれさえも、来季以降の伸びしろと受け止めたくなる。月並みな言葉だが、背中から滲み出る野球へのひたむきさがそう思わせる。

 プロ1年目の集大成となるCSファーストステージは10月8日に始まる。敵地・東京ドームに、背番号10の捕手が乗り込む。

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