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『4継』の魅力は想いをつなぐこと。
駆け出したくなる青春陸上小説。 

text by

今井麻夕美

今井麻夕美Mayumi Imai

PROFILE

photograph byWataru Sato

posted2016/10/02 08:00

『4継』の魅力は想いをつなぐこと。駆け出したくなる青春陸上小説。<Number Web> photograph by Wataru Sato

第一部「イチニツイテ」、第二部「ヨウイ」、第三部「ドン」。高校生の3年間は、濃い。

「人生は、世界は、リレーそのものだな」

〈人生は、世界は、リレーそのものだな。バトンを渡して、人とつながっていける。一人だけではできない。だけど自分が走るその時は、まったく一人きりだ。誰も助けてくれない。助けられない。誰も替わってくれない。替われない。この孤独を俺はもっと見つめないといけない。〉

 この小説の中で、いちばん好きな一節だ。圧倒的に孤独で、けれど一人きりではないというスプリンターの想いを表現できるのが、バトンパスなのかもしれないと思った。

 ああ、わたしも何かをつなぐために思いきり走りたい。そんな駆け出さずにはいられなくなる、ラストシーンをぜひ体感してほしい。

 佐藤多佳子は、北京五輪400mリレーの銅メダルメンバーを取材した『夏から夏へ』というノンフィクションも書いている。中にこんな一文がある。〈日本のバトンは、ただつなぐだけでなく、前後の走者をより速く走らせることができる創造的なパスだ。〉

 北京で走った高平慎士選手は、ロンドン五輪で山縣亮太選手、飯塚翔太選手と共にリレーに出場した。そのリオへとつながったバトンは、4年後には東京へ渡るはずだ。

この書評は紀伊國屋書店新宿本店・今井麻夕美さん、ヴィレッジヴァンガードイオンモール成田店・濱口陽輔さん、伊野尾書店・伊野尾宏之さんによるリレー形式での連載になります。それぞれ紹介いただくジャンルは、小説・自著本・ノンフィクションになります。
本読みがお薦めする「スポーツ本」とはいったいどんな作品なのか。次回もお楽しみに!
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