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イチローがオフに仕込んだ速球対策。
パワー投手相手の打率が大幅上昇。 

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笹田幸嗣

笹田幸嗣Koji Sasada

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posted2016/09/27 11:00

イチローがオフに仕込んだ速球対策。パワー投手相手の打率が大幅上昇。<Number Web> photograph by Getty Images

イチローの安打数はすでに昨年を越え、100本の大台も視野に捉えている。もうこの男が何をしても驚くことはない。

イチローの打席には、明らかにテーマがある。

 その前日のことだった。イチローはマイナーの練習試合に変則的に出場した。隣接するフィールドで2試合が行われる中、彼は打席のみ立つ形で交互に出場し10打席に立った。

 最初の4打席は遊ゴロ、見逃し三振、遊ゴロ、左翼線二塁打。ボールと思い見逃した2打席目を除き、打球を徹底して左方向に放った。そして、5、6打席目は一転して強引とも思える引っ張りの打撃で一ゴロ。そして、この日のフィニッシュは左中間二塁打と右翼線二塁打だった。

「いい練習になりましたよ。これだけ短時間に集中して打てるとね」

 短い言葉に、多くの狙いと手応えが隠れていると感じた。そして、翌々日の28日。彼は志願して再び同じ調整を行い、10打席に立ったのだった。

 取材を続ける中で、イチローの状態を測る自分なりのポイントがある。左足と打球方向だ。

 踏み込んだ左足が内側に絞り込まれながら、バットは鋭くインサイド・アウトに振り抜かれる。下半身にこの粘りがあるときのイチローは間違いなく好調だ。強い打球が左方向に飛んでいく。この感覚を調整したのが、10打席変則出場の2日間だったのではないか。そして、その合間のオープン戦で見せた、159キロの直球を痛烈に打ち返した中前打。イチローの体と頭が結びつきだした3日間だったと推測している。

「その先はご容赦願いたいと思います。はい(笑)」

 ピート・ローズ越えの日米通算4257安打を放った1週間後、順調なシーズンを送るイチローがこんな言葉を残した。

「4番目の(外野手の)立場は、今年の形というものは、もうキャンプが終わったときに出来ていないとダメなんでね。全然違うんですよ、捉え方は。3番目(までの外野手)は4月が終わったときでいいですけど、4番目はキャンプが終わったときじゃないとダメなんでね」

 そして、2016年度バージョンの打撃を最終確認したのが、4月1日と2日のヤンキースとのオープン戦。本人も認めている。

「キャンプが終わってから、マイアミに戻ってヤンキースと試合しましたよね。あそこがポイントだったですね。その先はご容赦願いたいと思います。はい(笑)」

 2日間の成績は3打数無安打。詳細は98マイル(約158キロ)の直球を二ゴロ、97マイル(約156キロ)の直球を遊飛、92マイル(約149キロ)のツーシームを左飛。“やってはいけない”ことを最終確認し、イチローは今季への準備を終えた。

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