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42歳になって最速タイムを大幅更新。
不可能を可能にするイチローの俊足。
posted2016/09/18 07:00
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
AFLO
日頃からハードなトレーニングを続ける野球選手であっても、年齢的な衰えは忍び寄るのが通例だ。境となる年齢はそれぞれ。35歳で下り坂に入る選手もいれば、もっと早いプレーヤーもいる。
だが、イチローは42歳になった今でも衰えをあまり感じさせない。それどころか、走力に関してはスピードアップしている驚きの事実がある。
7月17日のカージナルス戦のことだった。この日イチローは4打数3安打を記録したが、3本のヒットよりも“凄い凡退”があった。3回の第2打席。二塁ベース付近へのゴロに対し遊撃手は、ほぼ完璧なプレーで一塁へ送球したが、イチローが予想を上回るスピードで一塁を駆け抜けると塁審の手は真横に広がった。ビデオ判定の結果アウトに覆ったものの、明らかにイチローのスピードが審判の目を幻惑させた。試合後、イチローもこの走塁に手応えを感じ取っていた
一塁到達タイムは「5年前と比べても速い」。
「今日、(一塁まで)何秒ですか?」とはイチロー。報道陣が3.7秒であったことを伝えると、彼はこう答えた。
「3.7だったら速いよね。去年より速いことは感覚的にわかっているんですけど、そんなに違うとはね」
一塁到達まで4秒を切れば俊足と評価される中で、イチローの昨季の平均到達タイムは両リーグ通じて5位タイの3.98秒であった。このデータはメジャーリーグ公式サイトが出したもので、以下の通りになっている。
1 B・バーンズ(アスレチックス) 25歳両打ち 3.85秒
2 D・ゴードン(マーリンズ) 27歳左打ち 3.91秒
3 B・ハミルトン(レッズ) 24歳両打ち 3.95秒
4 D・デシールズ(レンジャーズ) 22歳右打ち 3.96秒
5 イチロー(マーリンズ) 41歳左打ち 3.98秒
5 J・アルテューベ(アストロズ) 25歳右打ち 3.98秒
20代半ばの選手の中に入り、41歳でメジャー5傑に入っただけでも驚きの事実と言えるが、その昨季平均を上回ること0.28秒。42歳になり、何故イチローはスピードアップに成功できるのか。常識では考えられないことだ。
「なんで? って言われるとよくわからないんだけどね。去年というか、5年前と比べても速いと思いますよ。少なくともヤンキースにいた頃('12年から'14年)よりは絶対に速いのでね」
自信満々にイチローは答えた。