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金本監督「超変革」への批判は妥当か。
阪神が強くなるための“近道”を探る。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNanae Suzuki
posted2016/09/01 07:00
若手選手を積極起用している金本監督。在阪メディアは“待ち”の姿勢を取れるだろうか。
巨人戦のスタメンは“まるで二軍”との表現。
甲子園大会最終日の8月21日、日刊スポーツ7面の「覚悟」というコラムは前日、0対3で巨人に敗れた阪神一軍のスターティングメンバーを取り上げ、酷評した。サブタイトルは“巨人にもナメられる「ベストオーダー」”。どんなスタメンだったのか見てみよう。
(遊)北條史也 22歳
(二)大和 29歳
(左)高山 俊 23歳
(右)福留孝介 39歳
(一)原口文仁 24歳
(中)中谷将大 23歳
(三)陽川尚将 25歳
(捕)坂本誠志郎 23歳
(投)青柳晃洋 23歳
9人の平均年齢は39歳の福留を入れても25.7歳と圧倒的に若い。同日(8月20日)のファームの打順はというと、(三)上本博紀、(中)俊介、(左)ペレス、(右)横田慎太郎、(一)新井良太、(指)柴田講平、(二)西田直斗、(捕)岡崎太一、(遊)植田海で、平均年齢は27.6歳。コラムの著者が冒頭で「ここはどこ? って、東京ドームに間違いない。でも、鳴尾浜にいるような錯覚に陥った」と書く気持ちもわかる。ファームのスタメンのほうがまだ一軍らしいのだ。
「今年に限って順位はどうでもいい」はずが……。
「開幕からずっとチェンジを続けてきたから、いまさらという気はしないでもない。でも何か寂しい。これがベストメンバーとするなら、ほんとうに寂しい」――著者は本当に阪神が好きなのだろう。しかし、金本知憲新監督が掲げた今季のスローガンは「超変革」。目先の勝利を追うのではなく、数年先に黄金時代を築くような気概を持って若手抜擢をしていこう、そういうことを「超変革」の3文字に託したのだ。
開幕前はオーナーをはじめとするフロント、マスコミ、ファンが三位一体となって「今年に限って順位はどうでもいい」と口にしていたが、7月中旬に坂井信也オーナーが「タイガースは消滅した」とネガティブな響きのある謎の言葉をオーナー会議後、マスコミに向けて発し、マスコミは「何か寂しい」とスポーツ紙に書く。それは「超変革」そのものを否定しているのではないか。