ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
「大好きなゴルフが嫌いになりそう」
岩田寛を救った“仲間”松山英樹。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byYoichi Katsuragawa
posted2016/08/28 07:00
プロという立場でも、楽しんでプレーする。松山と岩田の表情からはゴルファーとしての原点を感じさせる。
もう一度、チャンスをつかんだ時には分かるはず。
練習時間を共にした3日後、岩田が予選落ちをした大会2日目のことである。松山はラウンドのあとのインタビューを終えるなり「ヒロシさん、いくつでした?」と周囲に尋ねた。その日は自身のスタート直前まで、先輩のスコアをチェックする気のかけようだった。
残念な結果を伝え聞くと、松山はトボトボと歩き出し、つぶやいた。「ガビーン……オレのスコアよりもショックだ……」。悲哀を自分のことのように感じてくれる後輩が、無念さを分け合える仲間が岩田には確かにいるのである。
10月に始まる新シーズンにおける出場権の行方は、昨年と同じ入れ替え戦の結果に委ねられることになった。
岩田は1年前の入れ替え戦後のセレモニー、祝い酒を拒んだシーンについて、こう振り返る。「そんな(酒を飲むような)余裕が僕にはなかった。その時も調子がまったくよくなかったから、そういう余裕がまったくなかったんだと思う」。スタートラインでピンと張った緊張の糸は1年を通じて緩むことがほとんどなく、自分の足元が及ぶ範囲だけで思い悩んだ。
だがもう一度、チャンスをつかんだ時には分かるはずだ。ナーバスでない瞬間に得られるものが思いのほか大きいこと。そして決して孤独ではないこと。これまでも、これからも。
そう思えればきっと、祝杯に口をつける心のゆとりも生まれるはずである。
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