ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
「大好きなゴルフが嫌いになりそう」
岩田寛を救った“仲間”松山英樹。
posted2016/08/28 07:00
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Yoichi Katsuragawa
もう1年も前のことになる。
アメリカPGAツアーの出場権を争い、下部ツアー出身選手らが参加する全4試合の入れ替え戦(ウェブドットコムツアーファイナルズ)。昨年10月、フロリダでの最終試合を終えたコースでは、このサバイバルを勝ち抜いて、2015-'16年シーズンのレギュラーツアーへの切符を得たプロたちを祝うセレモニーが開かれていた。
下積み時代を乗り越えて夢を叶えた選手、かつての主戦場にカムバックを決めた選手……。苦労を乗り越えた者同士が互いの健闘を称え、喜び合う。
彼らが作るそんな祝賀ムードに、岩田寛はひとり違和感を覚えていた。
「スタートラインに立てた。ここからがスタートじゃないか」。そんな思いを募らせながら、彼は場内で振る舞われた祝杯のアルコールに口をつけず、じっとその場をやり過ごしていたという。
34歳で飛び込んだ夢のPGAツアーだったが……。
34歳で飛び込んだ夢のPGAツアー。岩田は参戦初年度の目標としていた来季のシード権獲得に及ばなかった。
2月のAT&Tペブルビーチナショナルプロアマで4位に入ったが、その後トップ10フィニッシュを決めることはなく、夏場前には、プレーオフシリーズ参戦、来季の年間出場権確保の条件となるポイントランキングの上位125位から弾き出された。
8月中旬、ノースカロライナ州で行われたレギュラーツアー最終戦・ウィンダム選手権もあえなく予選落ち。2日目には早くもコースを去る結果となったのである。