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本田圭佑は決して「戦力外」ではない!
ドリブル重視の戦術で生きる道は?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2016/08/23 11:30
ゴールを決めたバッカは、ベンチの本田圭佑のところへ駆け寄った。エースとの信頼関係は、ポジション奪還の武器になる。
守備への献身やボールキープは健在だが……。
左サイドでは、就任直後からモンテッラに「一流になれる素質がある。今季は是が非にでもブレイクしてもらう」と名指しで期待をかけられるFWニアンが、やはり先発フル出場した。
21歳のニアンは、プレッシャーをものともせずにプレシーズンマッチで3得点をあげた後、トリノとの開幕戦では攻撃の組み立て役を見事にこなした。ボールを縦へ、縦へ運びながら先制点と2点目に絡んだ。
FWバッカの決定力が計算できるからこそ、両翼は若手に託された。さらに、スピードを備えたドリブラーという役目には、新獲得FWのラパドゥーラというオプションもある。
つまり今のところ、これまでの指揮官たちが本田を起用してきた理由である“守備への徹底した献身ぶり”や“ボールキープ力”といった要素が、今季の3トップに求められていないのだ。
本田が中盤に活路を見出そうにも、3つの先発枠は開幕戦に先発した主将モントリーボとダイナミックな推進力が売りのMFクツカ、技巧派ボナベントゥーラを中心に8人がひしめき合う激戦区だ。そもそも本田はミラン入団以来、3枚の中盤で起用されたことがない。
本田も黙りっぱなしでは終わるまい。
セリエAでは、昨季からトップチーム25人登録枠制度が厳格に運用されており、長いシーズンを戦っていく上で25人枠の中にいる者は誰もが、監督たちにとって貴重な戦力だ。開幕戦1試合に出なかったからといって、本田を“戦力外”とする見方は性急すぎるだろう。
それでも、本田が起用される可能性があるポジションは右ウイングしかないのが現状だ。
昨季、通算37試合に出場しながら目ぼしい結果を残せなかった本田は、ファーストチョイスであるスソの控えに置かれたことを認識していることだろう。
トリノ戦で思う存分プレーしたMFスソは、今季の定位置確保に自信を見せた。
「今夜の試合は監督の要求に応えられたと思う。終盤に少し疲れを感じたけれど、次の試合では自分も点を取りたい」
ミランの開幕戦勝利は、実に6カ月ぶりに本拠地サン・シーロであげた白星だった。荒削りだが、若さと勢いのあるミランは今週末、強敵ナポリとのアウェーゲームに臨む。
戦わずして開幕戦を終えた本田は、思いの外サバサバした表情でミックスゾーンを通り過ぎた。その眼差しには力があり、迷いや悔しさといったものは感じられなかった。
カンピオナートは始まったばかりだ。本田もこのまま黙りっぱなしでは終わるまい。