リオ五輪PRESSBACK NUMBER
日本人初の9秒台、決勝進出かなわず。
100m走“最強の3人”に欠けたもの。
posted2016/08/18 17:30
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph by
JMPA
「人は4年間で変われると思う。東京までに変わりたい」
桐生祥秀(東洋大)は絞り出すようにこう話した。
ケンブリッジ飛鳥(ドーム)、山縣亮太(セイコー)、桐生の3選手はそれぞれの思いを胸にスタートラインに立った。100mに日本から3選手が出場するのは2004年アテネ五輪以来3大会ぶりのことだった。日本歴代2位の10秒01を持つ桐生を筆頭に、五輪前のベストが10秒07の山縣、10秒10のケンブリッジと過去最高のメンバーをリオに送った。
ケンブリッジが犯した“ルーキーミステイク”。
13日の予選、トップバッターとして4組目に出場したケンブリッジは昨年の北京世界陸上で100m3位のアンドレ・デグラス(カナダ)ら、自己ベスト9秒台の4選手と同じ組。自己ベストに近いタイムを出さないと通過は厳しいと思われた。
「緊張はしなかったですね。早く走りたくてたまりませんでした」。
得意ではないスタートや課題だった加速部分もうまくはまり、10秒13で組2着で予選通過した。
「全体的に流れはいいと思います。一番調子がいいかなと思っています」と準決勝でのさらなる飛躍を口にした。
準決勝では金メダル候補のジャスティン・ガトリン(米国)の隣のレーンになった。「ガトリンをやっつけてやるぞ、という気持ちで臨みます」と話したが、スタートでガトリンに飛び出されると、焦りもあったのか上体が立ち上がってしまった。そのため得意の後半の伸びに欠け、10秒17の7着に終わった。
「もっとやれるかなと思ったんですけど悔しいですね。やり直したいです」と話したが、世界トップ選手と肩を並べて初めて走る選手が陥るルーキーミステイクだった。