スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
バルサのカンテラは終わったのか。
「強すぎるトップチーム」の弊害。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAFLO
posted2016/08/05 11:00
カンテラ育ちのための席が減り続けるバルサで、サンペールは居場所を確保することができるだろうか。
結局、サンペールもバレンシア行きが濃厚?
本職のピボーテであるブスケッツとマスチェラーノに加え、セルジ・ロベルトやラキティッチもこのポジションでプレー可能だからだ。
セルジ・ロベルトのように複数のポジションをこなせればまだ良いが、サンペールは6歳からバルサのピボーテとしてプレーし続けてきたスペシャリストである。バルサBではインサイドMFでプレーすることもあったが、他に7人も本職がいる現状ではその可能性も薄いだろう。
こうした現状もあり、結局彼はバレンシアにレンタルに出される可能性が高くなってきた。はたして6歳からバルサ一筋でプレーしてきた生粋のカンテラーノは、初めて経験するバルサ以外のフットボールに適応し、自身の価値を証明することができるだろうか。
カンテラーノの台頭は、いまではまるで夢物語。
ブスケッツがヤヤ・トゥーレから、ペドロがアンリからポジションを奪う。グアルディオラ時代には現実として見られたカンテラーノたちの台頭は、今ではまるで夢物語のようだ。
トップチームへの扉が実質的に閉ざされている現状、ラ・マシアでは早い段階でバルサでの成功を諦め、他クラブへ移籍するカンテラーノが増えている。
結果として選手の入れ替わりが激しくなったバルサBは戦力を維持できず、一昨季に2部から3部へ降格。昨季もシーズン半ばまで4部降格の危機にさらされるなど、苦しい状況が続いている。
2012年11月のレバンテ戦にて、バルサは史上初めて11人のカンテラーノが公式戦のピッチに揃うという快挙を実現した。僅か3年半前のことである。
今もバルサは、欧州トップレベルの強さを維持している。だがその顔ぶれやフットボールの内容を見るたび、バルサらしさが失われつつある寂しさを感じてしまうのである。