マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
慶應・正木智也の驚弾で確信――。
清宮世代は「スラッガー世代」だ!
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/08/02 17:00
昨夏優勝校・東海大相模相手の2アーチ。正木はその名を全国に知らしめた。
ファールにしかならないインローを再びスタンドへ。
3回目の打席は、四球の走者を一塁に置いて、ノーアウトだ。すでに点差は6対1と思わぬ大差がついて、気楽といえば気楽な場面。ホームランだってなんだって自由に狙える、そういう場面だからというわけじゃなかったろうが、この打席のバッティングがいちばん見事だったから頭が下がる。
東海大相模リリーフの左腕・安里(あざと)海の速球をもう一度レフトスタンド中段へ、さっきよりモット低いライナーで叩き込んだ。
<インロー>だった。
サウスポーのクロスファイアーの軌道。軽く腕を振っているようで、コンスタントに135キロ前後を出せるパワーピッチャーのクロスファイアーだ。
楽なボールじゃ、絶対になかった。高校生が普通に打てば、ファールにしかならないボールだ。
それを、ものの見事にレフトスタンドの、それも中段。スタンドがなかったら、横浜スタジアムの向こうの公園も道路も越えていただろう。それほどの打球の<生命力>だった。
正木とかぶる、あのスラッガーのスイング。
私には<清宮幸太郎>が見えていた。
正木のスイングは、見るからに<スラッガー>の豪快さも、空振りでも相手投手を圧倒できるような力感もない。
グリップを胸の位置でこぢんまり構えておいて、そこから右肩の内側のあたりに控えめな<トップ>をとる。そこから、頭のてっぺんからタテに<串>を打たれたような姿勢でクルッと軸回転。バットがトップから遠回りせずに、まっすぐに振り下ろされて、ヘッドを立てたように見えるインパクトで、思い切りボールを引っぱたいている。
つまり、これが<清宮幸太郎>なのだ。そして、最後は、振り終わりのグリップの位置が前の肩より上に上がらない。
これも、清宮幸太郎のスイングの象徴的な一場面である。