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シリア、コンゴ、南スーダンからリオへ。
難民選手団が体現する平和の精神。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAP/AFLO
posted2016/08/08 11:00
開会式に臨んだ難民選手団。旗手は、南スーダンのローズ・ナティケ・ロコニエン選手。後ろには、シリアからのユスラ・マルディ二選手の姿も。
「難民でも大きなことができることを見せたい」
2013年、リオで行なわれた世界選手権でもそうだった。ポポレは、ついに逃げ出すことを決意し、難民として生きてきた。
「母国では家族も子どももいない。内戦で多くの人が死に、混乱状態に陥っています。私は人生をよりよくしたいと思いました」
ついに現実となったオリンピックで夢を描く。
「私は難民でも大きなことができる、ということを見せたいです」
活躍することで、自分の存在を親戚に気づいてほしいとも願っている。
「メダルを勝ち取り、すべての難民にささげたい」
陸上800mのジェームス・ニャン・チェンジェックはスーダンの南部で生まれた。13歳のとき、子ども兵を強制的に補充する反乱軍の誘拐を逃れた。隣国ケニアで難民として、多くのランナーを輩出していることで知られる町の学校に通い、トレーニングに励んだ。
やがて頭角を現すと、思った。
「その時、私はランナーとして成功するかもしれないと気づきました。そして、神が与えた才能なら、それを使うべきだ、とも」
はじめはランナーとして持つべきランニングシューズもなかった。それでも、シューズをはじめ身にまとうものは何でも、その足で勝ち取ってきた。
ジェームスは思う。
「メダルを勝ち取り、そのメダルをすべての難民にささげたいと思います」
彼ら3人ばかりではない。10人の選手それぞれに、大きな苦難があった。その中で、スポーツに打ち込み、希望を見出してきた。だから、打ち込んできたそれぞれの競技を通じて、世界中の難民に、夢を、希望を伝えたいと願う。