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全米プロで再会した池田勇太の変貌。
30歳、契約解除、そしてリオ五輪。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2016/07/28 11:40
歴代最年少での選手会長として、新規大会を作ったりと足跡を残した池田勇太。いまは1ゴルファーとして、上を目指している。
ゴルフバッグは各社クラブの寄せ集め状態。
ゴルフバッグを覗いてみると、ドライバーはプロギア、フェアウエイウッドはキャロウェイ、アイアンはヨネックス、ウエッジはブリヂストンとヨネックス、パターはオデッセイという具合だ。
「まあ、寄せ集めのバッグだけどよお。でも逆に言うと、好きなクラブが活かせるのは確かだよな。これで成績が出ているのも確かだからな」
クラブの調整や修理も、以前はメーカーのツアーレップ任せだったが、今は自身の手で行っている。鉛のテープをハサミで小さく切ってはヘッドやシャフトに貼り、キャディらチームの面々と「どう?」、「こっちのほうがいい?」などと言いながら、楽しそうに調整に励んでいる。
自分の頭で考え、自分の体で動き、文字通り、自分の手でクラブを操る。それは、ゴルファーとしての原点に戻ったとも言えそうで、原点回帰した池田は、だからこそ純真無垢な子供のように生気に溢れている。
そして、着実にステップアップしている実感があるからこそ、プロゴルファーとしての意欲が増して、表情も引き締まるのだろう。
“自由人”を活かして、ピンチを気合いでチャンスに。
今日から挑むバルタスロールは上がり2ホールの2つのパー5が特徴的な難コースだ。
17番は649ヤードと極端に長く、2オンが狙える選手は、まずいないと言われる。それでも全米オープン覇者のダスティン・ジョンソンは「今はソフトなフェアウエイが乾いて硬くなってくれば」と、イーグル狙いの可能性に言及しているが、池田は無理や無茶をするつもりはなく、頭の中には数式の基本形がすでに用意されている。
「ティショットはドライバーで打って、セカンドをどこに刻むかだな。ドライバーの位置次第、あとはピンポジ次第で、第3打に100ヤード残すか、130~140ヤード残すか」
554ヤードの18番は多くの選手が2オンを狙うであろうパー5。池田も「フェアウエイに行けば2オンが狙える」と、攻めるべきところは、もちろん攻めるつもりでいる。
「スコアはどのぐらいが出るのか全然わからないけど、(パー70だから)1つもぐれば60台。毎日アンダーパーを目指して、まずは予選通過を目指す。フツウにやって、初日から流れよくできればいい」
契約を失っても、“自由人”の身を逆に活かし、ピンチを気合いでチャンスに変え、けれど気負わず、気楽に、自分らしく。
そんな池田勇太ならではの戦いが、いよいよ今日から始まる。