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生命線のジャブを潰されてもV3!
井岡一翔、次の狙いはスーパー王者。
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byKyodo News
posted2016/07/21 11:30
一発ではなく、ダメージを積み重ねてのKO。井岡らしい勝利を見せ、統一戦へ向けて視界良好だ。
世界戦12勝は既に日本歴代2位。あとはビッグマッチ?
これで井岡は世界タイトルマッチで12勝。これはレジェンド、具志堅用高氏の持つ14勝に次ぎ、長谷川穂積(真正)、内山高志(ワタナベ)と並ぶ日本人選手の世界タイトルマッチ勝利数の歴代2位タイの記録となった。既に日本人2人目となる3階級制覇も達成している井岡。今後期待されるのが、団体間統一戦のような記憶に残るビッグファイトであることは論をまたないのではないのだろうか。
おりしも試合の直前、WBAが井岡と井岡の上位王者である“スーパー王者”フアン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)との対戦を正式に指令した。父でプロモーターの井岡一法会長は「統一戦にゴーサイン?」という質問に大きくうなずき「あとは向こうとの話し合い。うちは避ける気はない」と言い切った。
山中も、内山も、井上もビッグマッチを渇望している。
キャリアを重ねたチャンピオンたちは、みなより強い、より有名なボクサーとの対戦を希望している。そしてその夢は簡単に叶わないという現実に葛藤している。
WBCバンタム級王者の山中慎介(帝拳)は統一戦、海外でのファイトを口にし続けているが、いずれも実現しないまま防衛のテープを10まで伸ばした。同じくビッグマッチを熱望していた内山は12度目の防衛戦で敗れ、奈落の底に突き落とされた。
最も近い位置にいるのは、軽量級最強の呼び声高いローマン・ゴンサレス(ニカラグア)との対決が期待されるWBO世界スーパーフライ級王者の井上尚弥(大橋)であろう。それさえもタイミングの問題があり、実現の保証があるというわけではない。
なぜ彼らがビッグマッチを望むかといえば、それがより強い相手と拳を交えたいというボクサーとしての本能であり、歴史に残るような名勝負を演じたいというトップ選手としての強い欲求があるからだ。世界タイトルマッチという看板があれば、相手がだれであろうと盛り上がるという時代ではない。対戦相手の質を求めるファンの厳しい目も、彼らの意識を高める要因となっている。